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悪魔スヴェンガリ

Svengali(1931)

Director
アーチー・L・メイヨ

Cast
ジョン・バリモア / マリアン・マーシュ / ブラムウェル・フレッチャー / ドナルド・クリスプ

Production Company
ワーナー

我々怪奇幻想の愛好家には『狂へる悪魔』(1920)のジキル博士とハイド氏の演技で知られる「偉大なる横顔」ことジョン・バリモアのトーキー時代の作品。

パリの貧民街でその日暮らしを続ける音楽教授スヴェンガリは、ある日画家達のモデルを務める可憐な娘、トリルビーに出合う。彼女の歌声に大いなる可能性を見出した彼は、頭痛を癒すと偽り彼女を催眠術にかけることに成功。トリルビーを意のままに操るスヴェンガリは、恋人のビリーから彼女を奪いパリから姿を消すのであった。やがて、音楽家として大成したスヴェンガリがロシアで見出したという美しい歌姫の妻を伴って、再びパリへやってくる。しかしその妻とは、死んだはずのトリルビーに瓜二つであった・・・。

本作は一見すると、ベラ・ルゴシの演技にも通じるかのような、ジョン・バリモアの眼力を売りとした善悪二元論的な怪奇映画と思われがちである。しかし、名優バリモアが演ずる慇懃無礼な魔人スヴェンガリは単純な悪役ではなく、報われぬ愛の哀しき奴隷なのでもある。トリルビーを催眠術で操ることには成功したものの、彼女の真の愛は得られぬスヴェンガリの悲しみ、それがしっかりと描かれているからこそ本作には奥行きが生まれているのであり、屈折したロマンティシズムを強く刺激する。私のように、悪役や怪物といった「排除される側」の視点で感情移入してしまうような人間でなくとも、スヴェンガリをとことん追い詰めていくビリーの執念を見るにつけ、スヴェンガリに対する同情心は高まるのではないだろうか。

ドイツ表現主義を思わせる異様な空間の広がりを持つセットや、スヴェンガリの奇妙なメイクも如何にも怪奇映画的であり、古きよき時代の香りを漂わせている。スヴェンガリの複雑な心情を見事演じ切る名優バリモアの演技も合わせ、決して見て損はしない作品である。