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古城の妖鬼

Mark of the Vampire(1935)

Director
トッド・ブラウニング

Cast
ベラ・ルゴシ / キャロル・ボーランド / ライオネル・アットウィル / ライオネル・バリモア

Production Company
MGM

インターネットがまだ存在せず、個人輸入も容易にできなかった時代。怪奇映画の本に掲載されたスチール写真を眺めては「この映画の国内盤は出ないものか」と枕を濡らした我が青春時代。そんな当時の私が長い間観たい、観たいと思っていたのが本作『古城の妖鬼』(1935)である。怪奇映画の紹介では頻繁にその名を見る上に、スチール写真が載っていたりして、私を非常に欲求不満にさせた代表的作品の一つである。やがて大学生時代になった私は、漸く輸入版VHSを入手し、つたない語学力で感動にうち震えながら観たことを思い出す。

さてこの映画の最も大きな特徴は、トッド・ブラウニング監督が、ロン・チャニーを主演に撮った『真夜中過ぎのロンドン』(1927)を、ベラ・ルゴシ主演にしてリメイクした、という点にあろう。『魔人ドラキュラ』(1931)の監督と、主演が再び吸血鬼映画に再結集するのであるから、マニアにとってはそれだけでも充分に魅力的な映画である。一般的な視点から見ても、映像の美しさや、怪奇的な雰囲気など、『魔人ドラキュラ』に比肩しうるだけの、いや、テンポの面ではそれを遥かに凌駕する傑作であるといえる。惜しむらくは、ルゴシ演ずるモーラ伯爵が実は吸血鬼ではないという点とルゴシが喋るのは何とラストのたったの一言であるということが悔やまれる点なのであるが、それはストーリーの構成上しかたがない問題でもある。

『魔人ドラキュラ』は演出面でブラウニングの手腕が発揮されたとは決して言い難いものであったが、本作品は力が入っている。モーラ伯爵達が城の中でくつろいでいる怪しげな映像や、伯爵の娘ルナが血を吸おうと犠牲者にしのびよるシーンなど、随所に素晴らしい演出が成されている。全体的にいかにも怪奇映画的なムードが立ち込め、陰鬱な雰囲気が堪能できる傑作の一つである。

今や時代は21世紀となり、インターネットを通じて容易に輸入盤を個人で入手できるようになった。便利な世の中になった一方で、当時の私がアナログな情報をかけずって集め、専門店に出入りすることで漸く購入した、あの時の感動は逆に得にくい時代となってしまったかもしれない。しかしそれでもなお、私と同種の血が流れる方ならば、是非入手して、その幻想的な映像に触れて頂きたい作品である。