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生と死の間

I Walked with a Zombie(1943)

Director
ジャック・ターナー

Cast
トム・コンウェイ / フランシス・ディー / ジェームズ・エリソン / エディス・バレット

Production Company
RKO

RKOヴァル・リュートンが『キャット・ピープル』(1942)の監督であったジャック・ターナーを起用して制作したゾンビ映画の古典的名作。本作の邦題は幾つか存在し、テレビ放映時は『生と死の間』『私はゾンビと歩いた!』、ビデオ発売時は『ヴードゥリアン』、そしてDVD発売時は『私はゾンビと歩いた!』であった。原題に忠実に訳すならば『私はゾンビと歩いた!』が最も正しいわけではあるが、好みの問題上、本サイトではあえて『生と死の間』で統一することにする。

看護婦のベッツィーは、ハイチで農園を経営する裕福な一家ホーランド家のポールの妻ジェシカの看護婦として雇われる。ジェシカは過去に高熱を発症し、その後遺症で神経が麻痺してしまい夢遊病者のように歩き回る以外、意思や感情を現すことのない生きた屍のような状態となっていた。ジェシカの看病をする内に、ブードゥー教の医者の噂を耳にしたベッツィーは、藁にもすがる気持ちでジェシカをブードゥー教の医師のもとへと連れて行くのであったが。

本作で最も優れているのは、音による演出である。ベッツィーの心理状態に影響が及ぼされるシーンでは、必ず音による演出が意図的に重ねられている。ポールへの感情が愛情へと変わるきっかけはポールが弾くピアノの演奏。ジェシカを連れブードゥー教の呪い師へと向かう不安高まるシーンでは台詞を一切省きサトウキビ畑の中を吹き抜ける風と布の擦れる音のみという思い切った演出。そして、ベッツィーがブードゥー教の呪術的なトランス状態へと誘われる際のドラム。かなり「音」を意識したこれらの演出は、光と影が織り成すモノクロの美しい映像の中で、直接的な描写を避け暗示的比喩に満ちた作品作りを目指したRKOヴァル・リュートン作品の真骨頂と言えるだろう。

『生と死の間』(1943)は『ホワイト・ゾンビ』(1932)同様に、ジョージ・A・ロメロによって確立されたカニバリズム的色彩を持った、現代の我々がイメージするどろどろぐちゃぐちゃな「ゾンビ」映画ではない。しかし、それ故に生と死の狭間を彷徨うジェシカの儚さと、音による演出も相俟って非常に詩的で上品さを感じさせる作品に仕上がっている。正にヴァル・リュートン作品、と言うべき傑作。