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蛇の髪を持ち、見た者を恐怖で石化させるギリシャ神話のゴーゴンが登場する映画作品と言えば真っ先に思い出されるのが、レイ・ハリーハウゼンが創造した『タイタンの戦い』(1981)であろう。頭部には無数の蛇が蠢き、全身をてらてらとした鱗で覆われ下半身は大蛇のごとく。しゅるしゅるという音をたてながら弓矢を構え犠牲者へと近づくその異様な姿は文句なくゴーゴン(メデューサ)の最高のイメージを具現した秀逸なデザインであったと言えよう。そして、本作品もまた同じくギリシャ神話のゴーゴンを主題としたハマー・フィルム制作の怪奇映画である。ドラキュラやフランケンシュタイン、狼男といったいわゆる「西洋の」怪物を得意としたハマーとしてはこの『妖女ゴーゴン』(1964)は、やや特異な作品として位置付けられよう。
ドイツの寒村で画家とそのモデルが死亡する事件が起こる。警察は画家がモデルを殺した後に良心の呵責に耐えかね自殺したと結論づけるが、画家の父親であるハイツ教授はその検死を行ったというナマロフ医師や村人達の頑なな態度に不審を抱き、息子の汚名を晴らすため真相の究明に乗り出す。しかし、その調査中ハイツ教授はゴーゴンに遭遇し、石と化してしまう。しかし、完全に石化する前に書き記した手紙により、彼の息子のポールとその師のマインスター教授がさらなる調査に乗り出すのであった。
本作品の特徴はゴーゴンがドイツに現れるという、その突飛な設定にある。何故ギリシャ神話のゴーゴンをドイツを舞台として描くことが可能なのか?それが物語の鍵ともなっているため詳細な言及はあえて避けることにするが、このあまりに突飛な設定はある種反則的ですらある。また、ハマーの作品でピーター・カッシングとクリストファー・リーが共演する場合、その多くが善玉=カッシング、悪玉=リーという図式となっているのに対して、本作『妖女ゴーゴン』ではその図式が逆転しているのも面白い。とは言えカッシング演ずるナマロフ博士は完全な悪役というわけではないのであるが。
ただ惜しむらくは、いかにも怪奇映画然としたインパクト十分なメイクのゴーゴンがいまいち生かされ切っておらず、さして暴れることもなくただ立っているだけという、その扱いが低いことである。ハマー特有の恐怖の演出やテンポの良さ等は小気味良く、テレンス・フィッシャー監督、カッシング、リー出演という豪華な組み合わせな作品であるからこそラストのゴーゴンのあっけなさは勿体無い。往年のフィッシャー監督であればラストは絶対にこうはならなかったであろう、忍び寄るハマー衰退の影が垣間見られる佳作。
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