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バンパイア・ラヴァーズ

The Vampire Lovers(1970)

Director
ロイ・ウォード・ベイカー

Cast
イングリッド・ピット / ピーター・カッシング / マデリン・スミス / ケイト・オマーラ

Production Company
ハマー

シェリダン・レ・ファニュの『吸血鬼カーミラ』を原作とし、エロティック度を高めハマー史上初の裸体描写があったことで公開当時保守的な怪奇映画ファンからの苦情が殺到した作品。しかし時代はより刺激の強い作品を求めていたこともあり作品はヒットを飛ばし、ハマー・フィルムは本作『バンパイア・ラヴァーズ』(1970)に続き、『恐怖の吸血美女』(1971)、『ドラキュラ血のしたたり』(1971)とカルンシュタイン三部作と呼ばれるエロティック路線の作品を制作することとなる。

公開当時苦情が殺到したとは言え、現代の過剰なセックス描写に慣れてしまった我々からすればそれは微笑ましい程度のものであり、また当時のジェス・フランコやジャン・ローランらの低俗な監督が作り出した、扇情的なポルノまがいの吸血鬼映画と比較してもまだハマーの路線は品があり概して大人しいものと言える。しかし、それでも私はこのハマーのエロティック路線が残念でならない。生真面目で保守的な怪奇映画愛好家である私は、実は怪奇映画にあからさまな性的要素が入り込むことを極端に嫌う。最初から低俗な作品であるという認識があればまだ良いのであるが、ハマーのような良質な怪奇映画にはそういった要素は不要であり、純粋に怪奇映画としての幻想性だけで勝負して欲しいという思いが強いのである。

それでもなお、本作『バンパイア・ラヴァーズ』は後期ハマーの中でも優れた作品である。原作に比較的忠実に展開するストーリーは、当時オリジナルの脚本で質の低下を招いていたドラキュラ・シリーズと比べるとやはり骨組みがしっかりしている分魅力的であるし、ゴシック・ムード漂うカルンシュタイン城のセットや墓地のシーン等、後期ハマー作品の中では群を抜いて素晴らしい出来映えである。

カーミラを演じるイングリッド・ピットが、原作のイメージやその犠牲となるマデリン・スミスらの女優達と比較すると少々歳を取り過ぎているものの、その分妖艶な雰囲気を濃厚に漂わせており、妙に艶かしいのも本作の雰囲気にはより適していたと言えよう。「エロティックな」女吸血鬼ものを期待して観たならば肩透かしをくらうことは必至であるが、『吸血鬼カーミラ』を題材とした正統派の怪奇映画の中では私がベストと考える良質な作品である。