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バンパイア・イン・ベニス

Nosferatu a Venezia(1988)

Director
オーガスト・カミニート

Cast
クラウス・キンスキー / バーバラ・デ・ロッシ / ドナルド・プレザンス / クリストファー・プラマー

Production Company
レテイタリア

強烈な個性派俳優として知られるクラウス・キンスキーが、『ノスフェラトゥ』(1979)とは異なった正統派の吸血鬼を演じた作品。

その生涯を吸血鬼やオカルトの研究に費やしてきたカタラノ教授が、16世紀にトランシルヴァニアからベニスへと移住してきた一家に調査を依頼される。その一家には、200年前に吸血鬼の犠牲となった者の棺があるというのであった。やがて、カタラノ教授が反対する中、吸血鬼を呼び覚ます交霊術が行われる。その交霊術により、200年前に一家に災いをもたらした真の吸血鬼が目を覚ましてしまうのであった。

本作でキンスキーが演ずる吸血鬼は十字架を握りつぶし、人々に幻覚をみせる術を持ち、散弾銃すらものともしない。と、過去に描かれたどんな吸血鬼よりも強く、さらには鏡にもしっかり映る。作中では吸血鬼を死に至らせるには、処女の愛が必要であるとほのめかされるが、具体的な方法は示されずに幕は閉じてしまう。恐らく、数多の吸血鬼映画の中で、最も強い部類に属する吸血鬼と言えるのではないだろうか。

残念なのは、脚本の完成度がやや不十分であり、吸血鬼を退治するはずのカタラノ教授があっさりと中盤で引き上げてしまったり、その後を継いだ医師も幻覚に惑わされ退治に失敗する等、特に後半の脚本が若干破綻気味である点であろうか。しかし、その欠点を補って余りあるのが美しい映像である。舞台をベニスとしたことで仮面や華麗な衣装を纏ったカーニヴァルのシーンがあったり、ゴシック嗜好の強い建造物や室内装飾、全裸の女性を抱きかかえ朝靄の中に消えていく吸血鬼等、映像が幻想的で情緒に富んでおり、非常に美しい。正統派吸血鬼を演ずるキンスキーと美しい映像のためだけに本作を観る価値は充分にある、隠れた名作である。