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スリーピー・ホロウ

Sleepy Hollow(1999)

Director
ティム・バートン

Cast
ジョニー・デップ / クリスティーナ・リッチ / クリストファー・リー / マイケル・ガフ

Production Company
マンダレイ

今更私が言うまでもないことではあるが、ティム・バートンは非常にマニアックな、怪奇の血の濃い監督である。怪奇俳優ヴィンセント・プライスに捧げた『ヴィンセント』(1982)や、『フランケンシュタイン』(1931)をパロディした『フランケンウィニー』(1984)の微笑ましさ、『バットマン』シリーズでマイケル・ガフを執事役として起用したセンス、『エド・ウッド』(1994)で見せたB級映画に対するその思い入れの深さ等、彼には怪奇幻想映画を愛する血が濃厚に流れている。

そんな怪奇幻想映画への傾倒が強いティム・バートンがワシントン・アーヴィングの『スリーピー・ホローの伝説』を原作として撮影した、バートン初の怪奇映画が本作品『スリーピー・ホロウ』(1999)である。出演シーンは僅かではあるが、キャスティングには最後の怪奇俳優クリストファー・リーがマイケル・ガフと共にその名を連ね、「月夜の晩は、亡くした首がすすり泣く。」という謳い文句も手伝って、我々怪奇映画ファンの期待を嫌が上にも高まらせる。たとえ『タロス・ザ・マミー』(1998)のような僅かの出演シーンであれ、やはりリーの勇姿が拝めるのは理屈抜きに怪奇の血が濃い人間には嬉しいものなのである。だからと言って『タロス・ザ・マミー』に対する私の「駄作」という評価が変わるわけではないが。

また、ゴシック・ムードを高める幻想的で美しい映像も本作品の大きな魅力であり、美術・衣装・撮影の3部門でオスカーにノミネートされただけあって、首なし騎士の亡霊に怯えるニューヨーク市郊外の村、スリーピー・ホロウの幻想的で不吉な佇まいや、殆どが血縁者から成る村の長老達の奇怪な雰囲気、ジョニー・デップ演ずる捜査官クレーンの奇妙な器具の数々等、ティム・バートンならではの独特のユーモア感覚とマニアックな映像美は、見る者を圧倒する魅力に満ち溢れている。

唯一文句をつけるとするならば怪奇要素を濃厚に漂わせながらも、物語がサスペンス風の謎解きに終始するため、首なし騎士の存在がぼやけてしまっていることであろうか。科学的な解明に基づき、「殺人犯」を捕らえようとするクレーンの前に現れた、首なし騎士という超自然現象が近代科学の否定をする一方で、物語はその首なし騎士を操る「犯人」探しという極めて現実的な展開を見せる。この中途半端なストーリー展開が首なし騎士という存在を曖昧にしてしまい、怪奇映画としては焦点がぼやけた、ふっきれていない印象を与えるように思う。これは首なし騎士の不気味なインパクトが強烈なだけに、ひどく勿体無いようにも思われてならない。

しかしそんな文句を圧倒する程、本作の出来は素晴らしい。その芸術的に完成度の高い映像は、近年屈指の正統派ゴシック・ホラーであると言えよう。私がティム・バートンの傑作と考える『バットマン・リターンズ』(1992)を超える出来とは個人的には感じなかったが、それでもやはり本作品は一般層及び怪奇映画ファン双方にとって必見の映画であると言えよう。