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ロード・オブ・ザ・リング

The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring(2001)

Director
ピーター・ジャクソン

Cast
イライジャ・ウッド / イアン・マッケラン / ヴィゴ・モーテンセン / クリストファー・リー

Production Company
ニューライン

長らく映画化は不可能と言われていたJ・R・R・トールキンの『指輪物語』の完全映画化作品!原作同様三部からなる超大作で、本作は第一部『旅の仲間』にあたる。13歳の時に初めて『指輪物語』に触れて以来、『ホビットの冒険』や『シルマリルの物語』を読み耽り、ラルフ・バクシによるアニメーションの『指輪物語』(1978)を何度も見、ホビー・ジャパンから出ていた『指輪物語』のテーブルトークRPGを中学の授業中に皆とやっていたヘビーなトールキン・ファンを自負する私としては、当初この映画化が決定した時、非常に大きな不安を抱いた。しかも監督は『ブレイン・デッド』(1992)で強烈なブラック・ジョークを炸裂させたピーター・ジャクソンである。ただでさえ映画化が困難と思われるこの作品をピーター・ジャクソンが手がけるとは!この映画化が失敗すれば、『指輪物語』が再び映画化されるにはまた数十年待たねばならなくなるだろう。

しかし、その不安は杞憂に終わった。なんと素晴らしい映像!なんと原作に対する愛情溢れる内容!もはや冷静に語る程の余裕を私は持ち合わすことができない。キャストが発表された時に感じた当初の違和感は全く無く、完璧とすら思えるキャスティング!フロドが、サムが、メリーが、ピピンが、ガンダルフが、アラゴルンが、ボロミアが、レゴラスが、ギムリがそこにいる!サルーマンがいる!エルロンドが、ガラドリエルがいる!ホビット庄が、粥村が、裂け谷が、モリアが、ロスロリエンが、イセンガルドが、モルドールがそこにある!これほどまでに原作のイメージを損なうことなく映画化された作品があっただろうか!

過去に数々のトールキンの挿絵やイラストを手掛け、原作ファンのイメージの指針となっていたアラン・リーとジョン・ホウの二人をコンセプチュアル・アーティストとして迎え、ラルフ・バクシの『指輪物語』のイメージをも丁寧に織り込んだ本作は、それまで断片的にイメージされていた『指輪物語』の世界をこれ以上ないくらいにうまく一つに纏め上げている。ホビット庄の牧歌的な美しさ、ドワーフ達が築き上げたモリアの壮大な地下世界、エルフ達の住まう繊細にして幻想的な館、これらの素晴らしく丁寧に再現されたセットは原作を知らぬ者でも容易に『指輪物語』の世界に引き込むだけの強力な魔力を持っている。まさに、トールキンが偏執狂的に細部まで世界観を書き込んだ中つ国の歴史的背景が、緻密なセットと共に映像としてそこに再現されているからである。

しかし、第一部だけでも膨大な長さの原作を纏めたため、指輪を巡るプロローグにはじまりフロドの旅へと続く物語は、大衆向けの劇場公開作品としては決して適切とは言い切れぬ3時間近い尺数をもってしても慌しい印象は免れない。それでも原作に対して深い敬意をもって描かれる脚本は、物語の核となるべき重要な箇所を適切に選択しており、非常に好感が持てる。また、派手な魔術合戦やエルフの不自然にとがった耳等の昨今の安易なファンタジーに見られるような描写もなく、原作の持つアダルト・ファンタジーとしての品格を保っていることも重要なことである。

美しいニュージーランドの大自然をバックに、指輪を巡る旅の仲間の過酷な旅はまだ始まったばかりである。続く第二部、第三部へと期待を高まらせるに充分な壮大な叙事詩『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)は、間違いなく映画史に残る傑作として今後も原作同様に語り継がれていくであろう。

なお、最後に内容を理解しているとは思えぬ邦題と劇場公開時のひどい字幕には怒りを通り越して呆れてしまった。原作そのものの意を誤解しかねぬ単数形の邦題、翻訳者が原作を知らないことが露骨に表れ、誤訳とすら言われても仕方のない字幕と、日本映画界の文化の低さを露呈した一件であった。DVD化にあたって字幕が大幅に改善されたことは非常に喜ぶべきことであるが、残念ながら邦題に変更はなかった。