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J・S・レ・ファニュ

Joseph Sheridan Le Fanu(1814-1873)

世界で最も知られる吸血鬼小説がブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」であることは疑いもない事実であるが、そのドラキュラと双璧を成す吸血鬼文学の傑作がこのレ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」である。ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」がどちらかというと、活劇的な見せ場の多い小説であるのに対して、「吸血鬼カーミラ」は女性吸血鬼ということもあって文調は勿論、話の展開も非常に倦怠感に包まれた文学作品である。その頽廃的な雰囲気こそがこの小説の魅力であり、「吸血鬼ドラキュラ」とは趣を異にする所である。特に、写真に挙げたこの創元推理文庫版は、日本の怪奇幻想小説の翻訳家としては屈指のストーリーテラーであり、数々の素晴らしい訳で知られる平井呈一が訳しており、その原文の魅力を余すことなく我々に伝えている。

この平井呈一という翻訳家は、日本の怪奇幻想に非常に貢献した人物であり、私も彼の翻訳があったからこそ、この世界に足をより深く踏み入れたのであると思う。特に彼が翻訳をした『怪奇小説傑作集』や『恐怖の愉しみ』等のアンソロジーはその選別された物語もさる事ながら、やはり彼の素晴らしい翻訳そのものに酔いしれることのできる傑作アンソロジーである。

現在レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」を読むのならば、大栄出版のゴシックな写真をふんだんに使った版を強くお勧めする。訳は平井呈一ではなく新訳であるが、平井呈一の訳を強く意識したと思われる翻訳であるし、何よりも怒涛の幻想的な写真の数々との相乗効果が絶句するほどの素晴らしい雰囲気を作り上げている。この大栄出版のシリーズは他にポオがあるが、これには今後も期待をしたいシリーズである。