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モンタギュー・サマーズ

Montague Summers(1880-1948)

モンタギュー・サマーズ?この名前を見て首を捻った方も多いであろう。そう、モンタギュー・サマーズは小説家ではない。彼は魔女や吸血鬼に関する研究書を執筆した、研究者にして自称聖職者である。従って、怪奇幻想系作家を紹介するここの趣旨とは趣を多いに異にするのであるが、最近になって突如彼の研究書の邦訳が文庫化されるという無謀とも言える喜ぶべき快挙があったため、当サイトとしてもあえて彼を取り上げることとする。

吸血鬼に関する研究書というものは古今東西、非常に多く執筆、出版されてきた。しかしその多くが文学方面からの見地であったり、怪奇映画に誘発された学者気取りの映画オタクのようないい加減なものばかりであり、学術論文としての体裁を保っているものはほぼ皆無に等しいと言える。その点においてモンタギュー・サマーズの吸血鬼に関する研究は、豊富な事象の提示や、引用文献資料の明示的なビブリオグラフィー、といった論文には必要不可欠な要素等において、今もなお最高の研究書として位置づけることができるものである。

しかし残念なことに彼の吸血鬼に関する研究書の邦訳に完全なものはなく、"The Vampire: His Kith and Kin"と"The Vampire in Europe"の2冊から日夏耿之介が一部抜粋した上で、合わせて1931年に翻訳した『吸血妖魅考』しか存在していない。先に挙げた文庫版もそれの復刊である。この『吸血妖魅考』は、原書が持つ圧倒的な量の事例の大半が省略されていることに加え、日本語そのものも非常に古めかしく現代語ではないため、一部のマニア向けな感は否めない。是非とも現代語による完全な邦訳が望まれる。

なお、私は学生時代にヨーロッパの闇の歴史をテーマとした社会学者となることを目指し、卒業論文で「東欧における吸血鬼現象の考察」というテーマを掲げていた。そして、このモンタギュー・サマーズの"The Vampire: His Kith and Kin"の原書初版本を高価な金額で購入し、つたない語学力で読み解いていた。何とも懐かしい思い出である。この原書初版本は、今でもなお我が家の家宝の一つとして書棚に鎮座している。