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S・ジャクスン

Shirly Jackson(1919-1965)

シャーリー・ジャクスンと言えば、最も代表的な作品は「くじ」であり、また『ヘルハウス』(1973)と並ぶ幽霊屋敷ものの代表的怪奇映画『たたり』(1963)の原作として知られる「山荘綺談」であろうか。この上記二冊は出版社が大きく、扱っている書店が多いことからも、目にしている方も多いことと思われる。しかし、私が彼女の作品で最も度肝を抜かれた、最も背筋を寒くしたのは、上に掲げている「ずっとお城で暮らしてる」である。

そもそも、作者であるシャーリー・ジャクスンは、狂気に追いこまれる女性の心理というものを好んで主題にした作家である。本人が精神的な病にかかっていたこともあってか、その主題というのは執拗に描かれ読み手を苦しめる。それは「山荘綺談」においては幽霊屋敷へと調査に向かった女性の悲劇的顛末までの彼女の心理描写に濃厚に描かれており、幽霊屋敷の存在そのものよりも、狂気の淵に佇む彼女の精神状態こそがこの小説の焦点であるほどである。しかし、その主題が「ずっとお城で暮らしてる」ではより閉鎖的で、絶望的な狂気として執拗なほどに、言うなれば偏執的なまでに描かれ、その救いようのなさ、そして本人達はその狂気に安らぎを見出しているという事実に、私はどうにも言えない恐ろしさを感じた。言うなれば、本作品にはポオの「アッシャー家の崩壊」にも相通ずる狂気が横たわっており、それが小説全体に渡って描かれているのである。ラヴクラフトのように怪物が出てくるわけでもなく、殺人が行われるわけでもない。古城にひっそりと住むただの姉妹こそがこの小説の主人公なのであり、別段恐ろしい魔術の儀式が執り行われるわけでもない。にも関わらず、彼女達の崩壊していく精神、狂気へと向かう過程は、怪物や、魔術など以上に恐ろしいまでに読み手に突きつけられてくるのである。

シャーリー・ジャクスンは、まごうことなきストーリーテラーである。その圧倒的な文筆力が描く女性達の閉塞的な心理状況、狂気というものは、充分に怪奇小説と言えてしまうほど恐ろしい存在として読者に迫り来る。