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W・H・ホジスン

William Hope Hodgson(1877-1917)

我が国では、ウィリアム・ホープ・ホジスンは東宝が制作した怪奇映画『マタンゴ』(1963)の原作となった短編「夜の声」の作者として著名であろうか。ホジスンは13歳から8年間の間、船乗りとして洋上生活を送ったという作家としては珍しいキャリアの持ち主として知られている。そのため、ホジスンは海上の閉鎖的空間を舞台とした怪奇小説を得意としており、「夜の声」以外にも複数の海洋奇譚を執筆し、他の怪奇小説作家と比べその個性が際立っている。

「夜の声」は、難破した二人の男女に降りかかる恐るべき顛末を描いた傑作である。彼らは異様な灰色のキノコが密生する島へ辿り着く。やがて、飢えに耐えきれなくなった二人はキノコに手を出してしまうのだが・・・。その恐怖の顛末が闇の中、海上を漂っていたスクーナーに近づいてきたボートを操る姿見えぬ男性から語られるという、何ともぞっとする構成の話である。

しかし、ホジスンの怪奇小説は「夜の声」のような海上奇譚だけには留まらない。アルジャーノン・ブラックウッドがジョン・サイレンスを、シェリダン・レ・ファニュがマルチン・ヘッセリウス博士を生み出したのと同様に、ホジスンはカーナッキという「ゴーストハンター」を生み出してもいる。彼ら「ゴーストハンター」達は、怪奇小説界におけるシャーロック・ホームズのような存在であり、時に科学的に、時に呪術的な手法をもって非日常の超常現象に対して解決を行っていく。

ホジスンが生み出したカーナッキはホームズと同時代的であることもあってか、性格設定が限りなく重なる部分があり、「ゴーストハンター」達の中でも人気の高いキャラクターとされている。しかし、私としてはカーナッキが執り行う電子五芒星やカメラといた疑似科学的な調査方法には、微妙な如何わしさを感じてしまう。とは言え、「夜の声」のような海洋奇譚からゴーストハンターまでと、ホジスンは非常に器用な作家であることは間違いないだろう。