[心霊体験談]



第1話




皆さんは心霊現象というものを信じるだろうか?
霊魂、怨念、日常の裏側に潜む非日常。
私は怪奇幻想をこよなく愛するにも関わらず、
残念ながらそのような世界を信じていない。
心霊や幽霊といった霊的なる存在を認めていない。
いや、正確には認めるのが怖いからこそ頑なに否定しているのかもしれないが・・・。

 

そんな私がかつて一度体験した奇怪な体験をお話しようと思う。

 

それは私がフリーターをしていた頃の冬の夜のことである。
私はその日、自宅の近くに住む友人Sの家で遊んでいた。
酒も少々入っていたと記憶している。
夜も更け日付は翌日となり、私はSの家をいとますることにした。
季節は冬、しかもその夜は霧雨が降り、
深夜の静けさの中、街は霧に包まれ静かに呼吸をしていた。
私はSの家を出、霧雨に濡れながら自宅へと足を運ぶことにした。
Sの家から私の家までは歩いて数分である。
幼い頃から歩きなれた地元の道を私はてくてくと歩きはじめた。

 

暫く歩き、ふと顔をあげた。
私は普段下を向いて歩き、前を見る時は大抵上目で見るのであるが
何故かその時は顔をあげた。
私が歩いている道の少し離れた前方に霧が一部濃い場所があった。
何故か私はその霧が「異常」なもののように感じた。
よく見ると人の形のようにも見えなくもない。
その印象は歩を進め霧に近づくにつれ強くなる一方だった。
背筋に冷たい感覚が走ったが私は霊的なものを信じていない。

 

「やれやれ、俺も酔ってるな。」

 

わざとらしく自分にそういいきかせながら、
念の為私はサングラスを外した。
余談ではあるが、私は夏冬、昼夜を問わずサングラスをしているので
その夜もやはりサングラスをしていたのである。
自らの吐く息すら白くなる冬の夜、
しかも霧雨がしとしとと身体を濡らしているのである。

 

「霧に決まっている。」

 

そう思った。
しかし、サングラスを外してもその不可解な煙のような白いものはやはりそこに「いた」。
しかもより近づくにつれそれの形がはっきりと認識できることも分かってきた。

 

白いワンピースを着た少女だ。

 

こんな真冬の深夜にワンピースの女の子?
霧雨とはいえ雨が降っていると言うのに?
背丈からすると中学生ぐらいだろうか?
向こう側が透けて見えている。
閉じたままの口を横に大きく広げて、いや、あれは裂けているのだろうか。
その口の裂け具合からして、微笑んでるように見えなくもない。
しかし、鼻から上はぼんやりとしており眼は全く見えない。
そしてただ何をするでもなく、こちらを向いてただ立ち尽くしている。
でも彼女が私に気付き、私を見つめていることは何故か分かった。

 

「彼女は「俺」を見ている。」

 

私は異常に怖くなり、道幅5メートルくらいの細い道の隅に寄り
彼女とは反対側の端を歩くことにした。
全身に鳥肌が立ち、視線を彼女から外すことができなくなっていた。
そして彼女との距離は徐々に狭まり、遂に彼女との距離が数メートルとなった時、
彼女は霧が拡散するかの様に薄くなっていき、
私とすれ違う時には完全にその姿を消していた。

 

「なんだったのだろう?」

 

後日私はSにその話をし、酒が入っていたことや
天候などの原因も手伝ったのではあろうが、実に奇妙な出来事であったと話した。
その近辺で霊が見られるといった話は二人とも聞いたことがないし、
何よりもSも私も地元である。
かつて何度もあの道を歩いていたのである。
恐らくは私の見間違いであろう。
これが私の体験した現在のところ唯一の体験である。

 

しかし、この話には後日談が存在する。

 

この奇妙な出来事から数日後、
SはOという別の友人と彼の家で遊んでいた。
無論Oはこの私の奇妙な体験も知らなかった。
夜更け、腹が減った二人はコンビニに夜食を買い出しに行くことにした。
その夜も雨が静かに降り、霧が立ち込めていた。
二人はコンビニへと向かい、買い物を済ませ私が奇妙な体験をした道でSの家へと向かった。

 

時刻は私と同じ深夜3時頃。

 

霧が立ち込める冬の夜。

 

そして同じ道の同じ場所で

 

Oはそこに何か「異常」なものが見えるとSに言った。
しかしいくら眼を凝らしてもSには何も見えない。

 

「女みたいな白い人が見えないか?」

 

Oの言葉にSは絶句した。
私の話を聞いて冗談を言っているならばともかく、
この話を知らないOまでもが同じと思われるものを見るとは?
しかも天候や時間帯までもが奇しくも一致している。
その瞬間最も恐怖を感じていたのは「彼女」が見えていたOではなく
「彼女」は見えないものの一連の奇妙な話を知っているS自身であっただろうと
後日Sは私にもらしている。
しかしまたも「彼女」は何をするでもなく霧の様に消えたという。

 

あれから私は「彼女」に会っていない。
しかし、、、、、奇怪な体験であったと今でも不思議に思っている・・・。

 


 

 

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