The Dunwich Horror (1970)
Director:ダニエル・ハラー
Cast:サンドラ・ディー / ディーン・ストックウェル / エド・ベグリー / タリア・コッポラ
Production Company:AIP
ラヴクラフトの「ダニッチの怪」の映画化作品。『襲い狂う呪い』(1965)に続いて監督を務めるのはAIP/ロジャー・コーマンのポオ・シリーズで美術監督を務めていたダニエル・ハラーである。
アーカム大学で神秘学の教鞭を執るアーミテッジ教授のもとへ、世に一冊しか現存しないとされる魔導書「ネクロノミコン」の貸し出しを求め、田舎町ダンウィッチに住む青年が訪れてくる。彼はかつて「ネクロノミコン」を所有していたウェイトリー家の者であると身分を明かすが、アーミテッジ教授は彼の言動に不穏なものを感じ取り、ウィルバーの願いを断る。やがて、ウィルバーは教授の教え子であるナンシーをダンウィッチの自宅へ誘い出し滞在させるが、その目的は自らの出生の秘密に関連した恐るべき儀式のためであった。
半人半妖のウィルバーの描写、床を取り払い徐々に異様な改築を加えられていくウェイトリー家の異様さ、ウィルバーのもう一人の双子の兄弟の暴走、といった重要な要素をことごとく割愛し明らかな低予算で制作された本作は、ダンウィッチの住民達に広がっていく不安と恐怖や、原作が持っていた物語のスケールの大きさが全く感じられないものとなってしまっている。ラストのサイケデリックな映像処理も原作の持つ恐怖を伝えるには程遠く、加えて肝心の「ヨグ=ソトホース」が「ヤグ-サハ」と字幕翻訳されるに至っては、原作既読者にとって白けること甚だしい。にもかかわらず、数多の「ラヴクラフト原作」と称する映画化作品の中で本作は実はそこそこ健闘している部類に属するという事実が何ともやるせなく、複雑な気分にさせられる駄作である。
なお、ダンウィッチの看護婦役のタリア・コッポラ(タリア・シャイア)は、フランシス・F・コッポラの妹であり、後にロッキー・シリーズでロッキーの妻であるエイドリアンを演じることで世界的に有名となる。
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