Frankenstein (1931)
Director:ジェームズ・ホエール
Cast:ボリス・カーロフ / コリン・クライヴ/ エドワード・ヴァン・スローン / ドワイト・フライ
Production Company:ユニヴァーサル
フランケンシュタイン、この名前が怪物の名であると勘違いしている人は意外と多い。この名前は、正しくは怪物を創造した研究者の名前なのであり、怪物には具体的な名称はない、というのが知られざる事実である。従って、怪物の名前は「フランケンシュタインの怪物」というのが最も正しいということになろうか。この勘違いが生じる原因説には、いくつかの物があるのだが、やはり何と言ってもこの映画のあまりにも秀逸なメイクが多くの人に強烈な印象を与えたためだと思われる。
デ・ニーロが演じた『フランケンシュタイン』(1994)を見ても、あまり面白くなかったという人は多い。そう、やはりフランケンシュタインの怪物は「あの顔」でなくてはならないのである。漫画『怪物くん』の中で「フンガー」としか喋らず、首にはボルトが刺さり、額には大きな傷痕のある「あの顔」。やはり「あの顔」でなくてはフランケンシュタインの怪物ではないのである。それほどまでに我々のイメージを決定づけた映画、それこそがこの『フランケンシュタイン』(1931)である。
この映画、原作を超えてイメージの普及を行った程の強烈なインパクトを持つ作品で、一般的にイメージされる怪物のあの顔は、この映画によって創造されたものであり、何とこの作品の製作元ユニヴァーサルは、このデザインを特許として申請しているという程のものなのである。さらに、怪物が落雷によって生命を吹き返すというあの設定もなんと原作には見られず、この映画によって作り出された設定なのであった。
この作品と『魔人ドラキュラ』(1931)をして、当時の怪奇映画界を代表する存在となったユニヴァーサルは、以後この類の作品を連作していくことになるのであるが、やはり、格調の高さ、費用のかかり具合等は到底先の2作品に及ぶものはなかったと言える。雰囲気を盛り上げる古城のセット、光が細部まで行き渡らないが故の恐怖感、助手の傴僂男の歪んだ表情、そして何よりもあの、強烈な怪物のメイク!暗闇よりぬっと現われ出でる時のたまらない緊張感。確かに今でこそ当たり前となったCGや特撮はないものの、だからこそある種文芸作品の様な、風格を感じさせるまでの怪奇幻想溢れる作品に仕上がっているのである。昨今のホラー映画が技術の進歩の割には全く恐くなくむしろ滑稽なのは、やはり恐怖の演出と雰囲気の欠如なのだと実感させられる古典的名作である。
白黒映画ではあるものの、だからこそ感じ取ることのできる恐怖と緊張。双璧を成す『魔人ドラキュラ』が、現代の視点では既に色褪せた古典と化しているのに対して、本作品は決して時代に色褪せることはない、と言える価値のある作品である。怪奇映画に対して、敬遠をしている方は、是非この映画を最初に見ることを強くお勧めしたい。怪奇幻想に対する見解が一変することであろうと思う。
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