The Mist (2007)
Director:フランク・ダラボン
Cast:トーマス・ジェーン / ローリー・ホールデン / マーシャ・ゲイ・ハーデン / アンドレ・ブラウアー
Production Company:ディメンション・フィルムズ
スティーブン・キングの『霧』を映画化した、史上最強の鬱映画との呼び声も高い本作『ミスト』(2007)は、決して心が疲れている時に観てはいけない。ましてや、間違っても友人に薦めてはいけない。きっと貴方はその友人を失うことになるだろう。そのくらい本作のラストは衝撃的であり、観終わった後も長い後味の悪さを引きずることになる。
あるのどかな田舎町。激しい嵐が去った翌朝、スーパーへ息子と共に買い出しへと向かった画家のデヴィッドは、街を覆う原因不明の霧によってスーパーで身動きが取れなくなってしまう。やがて霧の中には正体不明の「何か」が蠢いており、人を襲うことが判明する。スーパーに閉じ込められた人々がパニックとなり、徐々に対立していく中、努めて冷静に対処しようとするデヴィッドであったが。
言ってしまえば本作は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)の亜流であり、訳も分からぬままに閉鎖的空間におかれた人々の極限状態を描く低予算映画なのであるが、とにかく、本作の鬱映画との評判は伊達ではない。原作の結末からさらに発展させたラストの衝撃は凄まじく、絶望的な瞬間に流れ出す、Dead Can DanceのThe Host of Seraphimも絶妙。リサ・ジェラルドの宗教的で観念的な歌声が耳から離れない。
人は置かれた状況の中で常に自分が信じる最前の対処を行おうと対応をするものであるし、こんな極限状態に置かれたら何とかしてその状況を打破しようともがくものだと思う。しかも、そんな状況の中で理知的に振舞うデヴィッドは、自分もその場にいたら同様の選択をするだろうと思わせるものばかり。そのバイアスを上手く利用して、それを幾重にも裏切って来る本作は尋常ではない。
監督のフランク・ダラボンは本作をモノクロで撮影することを強く希望しており、DVDのコレクターズ・エディションにのみモノクロ版の『ミスト』が収録されている。霧に包まれ視界を奪われる恐怖と不安がモノクロの映像によって強調され、より悪夢的なものとなっているので、既に本作をご覧になった方も是非モノクロ版で再度鬱となってみて欲しい。
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