This Island Earth (1955)
Director:ジョセフ・M・ニューマン
Cast:ジェフ・モロー / レックス・リーズン / フェイス・ドマーグ / ランス・フーラー
Production Company:ユニヴァーサル
それまで怪奇映画とほぼ同じジャンルとして括られ成立していたSF映画が明確にジャンルの色合いを変え始め、怪奇映画がSF映画に押されはじめたのが1950年代である。そして本作こそが、ユニヴァーサルが生み出した数々の「ユニヴァーサル・モンスター」の最期を飾る、メタルーナ・ミュータントの登場作品である。
メタルーナ・ミュータントのデザインを手掛けたのは『大アマゾンの半魚人』(1954)同様にミリセント・パトリック。脳が肥大化し、如何にも宇宙人然としたそのデザインは、当時のパルプマガジンに多く描かれていたベムの代表的外見をしており、今もなお絶大な人気を誇っている。
しかし、本作をメタルーナ・ミュータント目当てに観てはいけない。スチール写真から、きっとこの怪物が宇宙船内を舞台に大暴れするんだろう、なんて私のように無邪気な妄想をしてはならない。悲しいかな、本作には怪奇映画のユニヴァーサルの往年の姿はなく、『宇宙水爆戦』(1955)は純然たる古典的SF映画なのである。ドラマを主体として描かれているのは、宇宙開発が進んだ現代の視点では微笑ましい限りのレトロ感に溢れた、やや楽観的な近未来像である。しかも、我々怪奇映画の愛好家をがっかりさせることに、肝心のメタルーナ・ミュータントはメタルーナ星人によって操られる労働使役用の昆虫生物であり、その登場もラスト間際の数分間程度でしかない。
SF映画の原点であり頂点でもある『メトロポリス』(1927)の未来像が、現代の視点でもなお優れたデザイン性と思想性を兼ね備えているのに対して、本作『宇宙水爆戦』は何とも時代に色褪せてしまっている。それこそが、ドイツ表現主義とハリウッドのセンスの違いでもあり、悲しい現実なのであった。あぁ、もうちょっとメタルーナ・ミュータントが大暴れしてくれたらなぁ。
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