Clash of the Titans (1981)
Director:デズモンド・デイヴィス
Cast:ハリー・ハムリン / ジュディ・バウカー / ローレンス・オリヴィエ / クレア・ブルーム
Production Company:チャールズ・H・シニア・プロダクション
ギリシャ神話から、英雄ペルセウスと王女アンドロメダの物語を主軸に展開される、レイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した最後の作品。ペガサスは勿論のこと、クラーケンやケルベロス、そして極めつけのメデューサと、ハリーハウゼンによるダイナメーションのオンパレードである。
しかし、本作が公開された時点でハリーハウゼンは既に61歳。流石にシンドバッド・シリーズで見せていたような絶頂期の演出の細やかさやキレがなく、ハリーハウゼンの最高傑作とは言い難い部分もある。実際のところ、ペガサスの特撮は『恐竜時代』(1970)のジム・ダンフォースが大半を任されていたという話である。それでもなお、ハリーハウゼンのデザインやダイナメーションは少年達の心を掴んで離さないだけの魅力に満ち溢れている。
本作『タイタンの戦い』(1981)で特に傑出しているのは、ハリーハウゼンの創造物の中でも屈指のデザインのメデューサの造形である。頭部には無数の蛇が蠢き、顔はおろか全身が鱗で覆われ下半身は大蛇のごとく。しゅるしゅるという音をたてながら弓矢を構え犠牲者へと近づくその異様な姿は、少年時代の私を震え上がらせるに充分であった。その強烈なインパクトはラストの大団円を盛り上げるはずのクラーケンすらをも霞ませてしまう程である。
一方、物語はオリュンポスの主神ゼウスの我侭全開で、何とも理不尽な「約束された英雄物語」となっており、ペルセウスに感情移入するには若干躊躇いを覚える部分がある。しかし、ギリシャ神話自体がそもそもそのような側面を持つ神話体系であるため、ある程度そこは仕方ない部分とも言えようか。
今や時代はCGによる特撮が主流となり、特撮の神様であるウィリス・H・オブライエンや、その弟子であるレイ・ハリーハウゼンといったストップ・モーションによる特撮は殆ど見られないものとなってしまっている。しかし、実際に「そこに在る」造形物が実際に動かされ、実写の人間と合成され映像となっている、というリアリティと感動は未だCGが成し得ないものであり、恐らく今後も絶対に越えられぬ壁であり続ける。何故ならストップ・モーションには、少年達が怪獣のおもちゃで遊んでいた頃と同じ、心を躍らせるわくわく感があるからである。古い特撮技術と侮るなかれ、本作には少年時代の心を蘇らせる「夢」がいっぱい詰まっている。
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