Dead & Buried (1981)
Director:ゲイリー・A・シャーマン
Cast:ジェームズ・ファレンティーノ / メロディ・アンダーソン / リサ・ブロント / ロバート・イングランド
Production Company:バークレイズ
この邦題は酷い。安直に『ゾンビ』(1978)と『サンゲリア』(1979)を足して二で割ったかのようなこのタイトルでは、どろどろグチャグチャなゾンビ映画であるとしか受け取られないだろう。確かにショッキングな残酷シーンはあるものの、本作はむしろRKOの流れを汲むと言っても過言ではない、極めて良質な正統派ゾンビ映画である。
田舎の小さな港町ポッターズ・ブラフ。町を撮影に訪れていたカメラマンが炎上した車の中で発見される。彼は一命は取りとめたものの、全身を酷く火傷しておりとても状況を説明できる状態ではなかった。事故の調査を進める町の保安官ダンであったが、その努力をあざ笑うがごとく、小さな田舎町で次々と殺人事件が発生していく。一連の事件の背景に、怪しげなブードゥー教の存在を感じ取ったダンであったが、その疑いの眼差しはやがて彼の妻へも向けられていく。
本作の脚本はダン・オバノンが担当しており、サスペンス色の強い展開が観る者を最後まで飽きさせない。一見何の変哲もない平和な田舎町という非常に狭いコミュニティの中で次々と起こる残虐な殺人事件は、一体誰が何のために行っているのかという強い疑心暗鬼をより高まらせ、『ボディ・スナッチャー 恐怖の街』(1956)を彷彿とさせるような薄気味の悪さを生み出すことに成功している。ラストのどんでん返しも捻りが効いてて救いのないところも怪奇映画的で素晴らしい。
なお、本作のゾンビはロメロが確立したカニバリズムと伝染性を持ったものではなく、より古典的なものである。邦題の酷さに観ることを敬遠している方がいるのであれば、是非とも先入観を捨てて観て欲しい、スプラッター全盛時代に製作された古典的ゾンビ映画の隠れた傑作である。必見。
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