La Cite des Enfants Perdus (1995)
Director:ジャン=ピエール・ジュネ
Cast:ロン・パールマン / ジュディット・ビッテ / ドミニク・ピノン / ジャン・クロード・ドレフュス
Production Company:カナル+
ミエットを美しいと感じることが幼女趣味だと言うならば、私はそう呼ばれても構わない!
いきなり変態的なはじまりで恐縮ではあるが、恥も外聞もなくそんな言葉を叫びたくなる程、『ロスト・チルドレン』(1995)は近年稀に見る傑作の一つである。『デリカテッセン』(1991)で独特のブラックユーモアと美的感覚で、グロテスクでありながらも美しい世界を作り上げたジュネ&キャロが生み出した本作は、素晴らしく悪夢的で幻想的な異世界へと我々を誘ってくれる。
迷宮のように入り組んだ、子供の誘拐が相次ぐ港街。街には肉体的な視界を捨て去り、機械の目を得ようとする怪しげな一つ目教団や、子供達で組織された窃盗団が跋扈する。そんな街の片隅で、ある日見世物小屋の怪力男ワンはまだ幼い弟を一つ目教団にさらわれてしまう。一つ目教団を追うワンはやがて窃盗団の少女ミエットと知り合い、彼女と共に弟を探し始めるのだった。
奇怪な風貌の一つ目教団、窃盗団を操る年老いたシャム双生児、アヘン中毒のノミ使い、世にも美しい小人、6人のクローン人間等、なんとも江戸川乱歩を思わせる猟奇的で耽美的な登場人物達。そしてそんなフリークス達に強い説得力を持たせる、幻想的で美しい緑色に彩られた猥雑で混沌とした街並み。日本の映画界がアニメーションでしか表現しえぬ世界を見事に映像化した、美術監督マルク・キャロの素晴らしい想像力!この完璧な美術なくしては、『ロスト・チルドレン』の御伽噺的な物語はリアルな存在とは成り得なかったであろう。
また、アクの強い役者達に混じり強い存在感を放つミエットを演ずるジュディット・ビッテの美しさも特筆すべきものがある。少女でありながらも、時折みせる仕草に色気を感じさせる彼女の演技力と存在感は、冒頭の言葉ではないが大人の私でさえもはっとせずにはいられない程である。このワンとミエットの関係は、『レオン』(1994)のレオンとマチルダを連想させるが、『レオン』のそれに比べより純粋で美しく感じられるのがいい。
『アメリ』(2001)の大ヒットで注目を浴びるジャン=ピエール・ジュネであるが、その一癖も二癖もある彼の持ち味は、本作においてこそ真に発揮されている。もしも未見の方がおられれば、是非とも見ることを強くオススメしたい。複雑に入り組んだ物語であるため、物語を理解するのが多少困難ではあるかもしれないが、悪夢のように美しい御伽噺の傑作である。
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