サザン・デス・カルト
Sex Gang Children、The Danse Societyと共にポジティヴ・パンク御三家と称されたSouthern Death Cultは、81年にイギリスのブラッドフォードで結成されたバンドである。そもそも「ポジティブ・パンク」というジャンル自体が半ば架空のムーヴメントであったため、他のSex Gang Children、The Danse SocietyらとSouthern Death Cultには音楽的な共通要素を見出すことは難しい。しかし、パンクが終焉した後のシーンにおいて次なるムーヴメントを模索する新たなる潮流としてのパワーを内在したバンドという意味では、彼らは確かに共通的な要素を持っていたと言うことができるかもしれない。
Southern Death CultはTheatre of HateやBauhausと共にツアーを回る等してその知名度を高めていたものの、83年に解散。その後ヴォーカルのイアンはDeath Cultを結成、他のメンバーはGetting the Fearを経てInto a Circleで活動を行う。イアン率いるDeath Cultは、シングルを2枚発表した後さらに名を縮めてThe Cultへと変遷し、アメリカを中心にメジャーでブレイクしたのは皆様御存知のことだろう。名が縮まるにつれ、ハード・ロック色が強くなっていったのも彼らの特徴であるが、それはまた別の機会に紹介することにする。
北米ネイティブ・インディアンへの傾倒で知られるイアンの伸びのあるヴォーカルはまだ荒削りではあるものの、当時からその片鱗を充分に伺わせ、ポジティブ・パンクと呼ばれたバンド達の中でも頭一つ飛びぬけた印象を与える。そして、バックの土着的で呪術的なリズムにやや単調なギターが生み出すサイケデリックなサウンドは、今もなおその輝きを失っておらず、パンクの持っていた荒々しさの中にも新たなる要素に満ちている。
残念ながら、Southern Death Cultの残された音源は、正確にはフル・アルバムではない。制作途中で解散をしたため、彼らの唯一のアルバムはシングルやライブ音源を寄せ集めたものしか存在しないのである。しかし、それでも彼らの持つ「勢い」が充分に感じ取られる傑作であることは間違いなく、ポジティブ・パンクといったカテゴライズの壁を打ち破る力がそこにはみなぎっている。
Discography (Album)
Released 1983
01.Fatman / 02.Moya / 03.The Girl / 04.All Glory / 05.Today / 06.False Faces / 07.Flowers In The Forest / 08.Patriot / 09.The Crypt / 10.Crow / 11.Faith / 12.Vivisection / 13.Apache