Der Golem (1920)
Director:パウル・ヴェゲナー
Cast:パウル・ヴェゲナー / アルベルト・スタインリュック / リダ・サルモノバ / ハンス・ストゥルム
Production Company:ウーファ
パウル・ヴェゲナーによるゴーレム3部作の3作目にあたる作品。後のユニヴァーサルの『フランケンシュタイン』(1931)や我が国の『大魔神』(1966)に影響を与えたドイツ表現主義時代の作品であり、フランケンシュタイン・テーマの原型を作り上げたことで知られている。事実、ユニヴァーサルがベラ・ルゴシを主演に撮影した『フランケンシュタイン』の試写版はヴェゲナーのゴーレムのような張りぼてをルゴシが被っていたという。
人の手により生み出されたが故に善悪の価値判断基準を持たず、無垢な精神による殺人というテーマ。そのゴーレムの精神と、時に可愛く時に残酷な子供の無邪気さの共通点。後により雄弁に語られることとなるフランケンシュタイン・テーマが既にこの映画の中に描かれていることに驚きを禁じえない。
とは言え、やはりそれはあくまで原型としての存在であり、ユニヴァーサルでボリス・カーロフが一言も発することなく雄弁に演じきった『フランケンシュタイン』と比較すると、磨かれる前の原石という印象は免れない。しかもヴェゲナーの演ずるゴーレムは滑稽と言わざるを得ない風貌をしており、その顔のアップには、怪奇幻想映画を愛する私でさえも失笑を堪えなくてはならぬ微妙な作品でもある。
ゴーレム自体も生み出したユダヤ人のラビの薪割りや買い物といった、あまりに地味な使役を行う存在として留まっているため、怪奇映画としては全体的に地味な古典という位置付けに甘んじている作品ではあるが、機会があれば一見して頂きたいと思う。フランケンシュタイン・テーマの原点がここにある。
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