Orlacs Hände (1924)
Director:ロベルト・ヴィーネ
Cast:コンラート・ファイト / アレクサンドラ・ソリナ / フリッツ・コルトナー / カルメン・カルテリエリ
Production Company:ベロリーナ
モーリス・ルナール原作の「オルロックの手」の最初の映画化作品。ドイツ表現主義を代表する『カリガリ博士』(1920)のロベルト・ヴィーネ監督にコンラート・ファイト主演と、サイレント映画好きにはたまならいキャスティングである。後にピーター・ローレ主演で『狂恋』(1935)としてもリメイクされている。
ピアニストであったオルロックは、汽車の事故によって両手を失ってしまう。著名な外科医であるセラール博士によって他人の手を移植されたオルロックであったが、何とその両手は殺人で処刑された犯罪者の両手であった。自らの両手が殺人者のものであることを知ったオルロックは、自身までもが殺人者であるかのような幻覚に捕われていく。そんな最中、オルロックの父親が殺害され、現場には処刑されたはずの犯罪者の指紋が残されていた。
『狂恋』が、ローレ演ずるゴーゴル博士その人に恐怖の焦点を当てているのに対し、本作『芸術と手術』(1924)では殺人者の腕を移植されたオルロックの強迫観念に恐怖の焦点が当てられている。誤解を恐れずに単純化して比較するならば、この恐怖の観点の相違こそが、ドイツ表現主義とハリウッドの違いである、と端的に言うことができるのではないだろうか。ただし、厳密には本作はオーストリアの映画であり、『狂恋』はドイツ表現主義の流れを汲むカール・フロイントの監督作品ではある。
コンラート・ファイト演ずるオルロックの神経質な仕草や表情は、後にAIPのポオ・シリーズでヴィンセント・プライスが見せた演技を想起させるが、サイレント映画故にそれはより大仰なものとなっている。終始目を大きく見開き、体全体で怯えるコンラート・ファイトの演技は観ている者をも不安で満たすほどである。まさに、コンラート・ファイトの面目躍如な作品。
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