Doctor X (1932)
Director:マイケル・カーティス
Cast:ライオネル・アットウィル / フェイ・レイ / リー・トレーシー / プレストン・フォスター
Production Company:ファースト・ナショナル
ワーナーが当時試験的に採用していた二色式テクニカラーで撮影された二本目の映画。三原色を正確に映し出すいわゆる現在のテクニカラーと違ってやや青みがかったその色彩は、独特の味わいを醸し出している。
満月の夜に決まって行われる、犠牲者の肉体の一部が切り取られるという猟奇的な連続殺人事件が発生する。事件が医科大の外科研究所の付近で発生していたこともあり、警察は医科大の関係者を疑いだす。医科大のザビエ教授は大学の名誉を賭け48時間以内に自らの心理試験で犯人を突き止めると警察に宣言する。そして、ザビエ教授の指示のもと、カニバリズムの研究者で義手のウェルズ博士、月が精神に与える影響を研究するローウィッツ博士、足が不自由なデューク博士、ヘインズ博士らが集められ、心理試験が行われる。
直接的な描写はないものの、明示的にカニバリズムやレイプといった猟奇犯罪を主題としたというのは、この時代の作品としては非常に珍しく過激なテーマと言える。そのためか、作品はその犯人を探すサスペンス映画的展開であり、随所には新聞記者を演ずるリー・トレーシーによるコミカルな要素も散りばめられている。そのタイトルから、絶対にドクターXという名のマッド・サイエンティストものに違いないと思い込んでいた私としては、随分と肩透かしをくらった気分である。
なお、本作における特殊メイクを担当したのは、何と化粧品会社として知られるマックスファクターの創始者マックス・ファクターその人である。彼は1909年に設立した化粧品会社マックスファクターを経営する一方で、ハリウッドでの美容アドバイザーとしてもメークアップに携わっており、その流れから本作及び『肉の蝋人形』(1933)の特殊メイクにも関係することとなったと思われる。怪奇映画に関する何とも意外な「トリビア」と言えよう。
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