The Mask of Fu Manchu (1932)
Director:チャールズ・ブレービン
Cast:ボリス・カーロフ / リュイス・ストーン / カレン・モーリー / マーナ・ロイ
Production Company:MGM
サックス・ローマーが1912年より雑誌に連載した悪の天才科学者フー・マンチュー・シリーズの通算5度目の映画化作品。ハリー・エイガー・ライオンズ、ワーナー・オーランドに続いて3代目フー・マンチューを演ずるは何とボリス・カーロフである。西洋人が東洋人であるフー・マンチューを演ずるという、一見突飛な発想ではあるがそこはカーロフ、モノクロの画面も手伝って思いのほか違和感のない演技を披露している。
イギリス政府によってジンギスカンの墓が発見され、バートン博士の指揮のもと、その発掘が計画される。しかし、その発見を知った悪の天才科学者フー・マンチュー博士はジンギスカンの仮面と剣を手に入れ、彼の威光を背にすることで世界を征服せんとバートン博士を誘拐する。博士誘拐を知ったイギリス政府は、ロンドン警視庁のネイランド・スミスを救出に向かわせる。かくして、ジンギスカンの仮面を巡り、宿敵ネイランド・スミスとフー・マンチュー博士の戦いが切って落とされるのであった。
さて、本作の見所は何といってもその衝撃のクライマックスにある。その我が目を疑うクライマックスとは、フー・マンチューの数々の意匠を凝らした恐るべき拷問方法でもなく、ジンギスカンの暴かれた墓でもなく、一堂に会した東洋の悪人達を正義の味方ネイランド・スミスが一掃するシーンである。フー・マンチューの高圧電流装置を発見したスミスは、何と悪人達が集う会堂の天井より高圧電流を打ち放つ。自らは決して傷つくことのない高所からばたばたと悪人達をなぎ倒していく様は、東洋人の目には何とも人種差別的で、決して英雄的とはいい難い残酷なものに映る。そもそも、サックス・ローマーの原作からして日露戦争に端を発する黄禍論を根底に持つものであるためいたしかたないこととは言え、何とも複雑な心境にさせられる演出である。
後にフー・マンチューを演じたクリストファー・リーの尊大な演技と比べ、ボリス・カーロフのそれは慇懃無礼で、よりいかがわしさを漂わせている。個人的には中華系の訛りを交えて演技を見せるリーの方に軍配を挙げたいと思うが、カーロフのいかがわしいフー・マンチューも必見である。
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