Mad Love (1935)
Director:カール・フロイント
Cast:ピーター・ローレ / フランセス・ドレイク / コリン・クライヴ / テッド・ヒーリー
Production Company:MGM
素顔なのにとにかく怖い、ピーター・ローレがインパクト充分のスキンヘッドで挑むモーリス・ルナール原作の「オルロックの手」。現代医学が進歩した今となってはやや稚拙と言わざるを得ない仕掛けの原作ではあるが、ドイツ表現主義の流れを汲むカール・フロイントの美しい映像とピーター・ローレの演技で観る者を引きつけるに充分な作品である。
天才的外科医ゴーゴル博士は「恐怖座」の女優イヴォンヌに惚れ込み、夜毎劇場へと足を運んでいた。しかしイヴォンヌはピアニストである夫、スティーブンとの同棲生活のため舞台を降りてしまう。イヴォンヌの蝋人形で傷心を癒すゴーゴル博士。そんな中スティーブンが列車事故に遭ってしまう。ピアニストにとって命の次に大事な両手を失うことを恐れたイヴォンヌは、ゴーゴル博士に手術を頼み、見事スティーブンは両手を失わずにすむ。しかし、ゴーゴル博士が彼に移植した両手は、ナイフ投げを得意とする死刑囚の両手であった。
囁くように喋り、全体的に抑えたピーター・ローレの演技は、その表情と相まって非常に不気味な印象を与えることに成功している。偏執狂的なまでにイヴォンヌに固執し、蝋人形へと囁きかけるローレの姿は、それだけで充分にぞっとするものがある。
なお、本作を未見であった頃、両腕が機械でサングラスをかけた人物が映っている本作のスチール写真を見る度に、私はSF風の怪奇映画を夢想し「一体どんな映画なんだ!?」とずっと疑問に思っていた。既に輸入盤を入手した今となっては笑い話ではあるが、本作は決してSF映画ではなく、純然たる怪奇映画であることを念のため最後に申し添えておく。
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