The Raven (1935)
Director:ルイ・フリードランダー
Cast:ボリス・カーロフ / ベラ・ルゴシ / アイリーン・ウェア / レスター・マシューズ
Production Company:ユニヴァーサル
ユニヴァーサルを代表する怪奇俳優であるベラ・ルゴシとボリス・カーロフがポオの「大鴉」を元に競演した作品。ポオ原作とは名ばかりなのはお約束。脚本は「大鴉」と「陥穽と振子」をイメージの源泉として大幅な脚色が加えられている。
ポオに心酔する医学会の権威ヴォリン博士は、交通事故で瀕死の状態にあった美貌の舞踏家ジーンの一命を取り留める。彼女の美貌に心を奪われるヴォリン博士であったが、ジーンには既に許婚がおり、彼女の父親であるサッチャー判事は博士に彼女を諦めるよう強く警告をするのであった。やがて、脱獄者であるベイトマンという男が人相を変えてもらおうと博士の下を訪れる。しかし、博士はベイトマンの顔を以前よりもより醜く手術を施し、元に戻して欲しければ、サッチャー判事達への復讐に手を貸すよう彼に命令するのであった。
俳優序列はカーロフの方が上ではあるものの、事実上の主役はルゴシ演ずるヴォリン博士であり、台詞や見せ場も多いため、ルゴシのファンにとっては非常に満足のいく作品である。ルゴシのハンガリー訛は晩年まで抜けることがなく、その俳優生命を大きく左右する一因となったのであるが、初期の頃に比べれば、本作の頃には比較的その訛も聞き取り易いものとなっている。
ルゴシが晩年に数多く演ずることになる、類型化され単純化されたマッド・サイエンティストものと比べると、ポオに心酔する余り狂気に捕われていくヴォリン博士という役柄は人格設定自体に深みがあるし、一方のカーロフ演ずるベイトマンも犯罪者ではありながらも、ルゴシの狂気と正義の間で揺れ動く複雑な役どころとなっている。ルゴシに醜く整形されたカーロフのメイクが余りに稚拙で低予算映画であることを感じさせはするものの、この二大怪奇俳優の共演作の中では、最も二人の演技が光っており、満足度の非常に高い作品と言えるのではないだろうか。
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