The Devil Doll (1936)
Director:トッド・ブラウニング
Cast:ライオネル・バリモア / モーリン・オサリヴァン / ルーシー・ボーモント / フランク・ロートン
Production Company:MGM
バリモア三兄弟の長男にしてジョン・バリモアの兄である、ライオネル・バリモアが主演する一風変わった怪奇映画。トッド・ブラウニング監督の作品としては珍しく、怪奇映画であるにも関わらず何と最後にはほっこりさせられるという、何とも良く出来た映画である。やはり鬼才ブラウニングは只者ではない。
共同経営者達から無実の罪を着せられ、17年間刑務所に投獄されていた元銀行家のポールは、刑務所で知り合った科学者マルセルと共に脱獄に成功する。マルセルは妻マリータと生物を縮小する研究を長年続けており、生物の縮小化には成功していたものの、縮小された生物は周囲の人間の命令によってのみ行動するのであった。しかし、ポールにその研究成果を見せていた最中にマルセルは心臓発作で倒れてしまう。そこでポールは、マリータと共にパリへと向かい人形屋の老婆に変装し、人形を使って3人の銀行経営者達に復讐を開始するのであった。
人間までも縮小可能で、さらにはそれを操ることができるという何とも奇天烈な設定を聞くと、本作『悪魔の人形』(1936)は合成技術を使った単純な復讐譚かと思われがちであろう。しかし、本作は合成技術の高さもさることながら、バリモアの演技力の高さこそが最大の魅力な作品なのである。人形屋の老婆と本来の銀行家を演じ分けるバリモアの演技力は尋常ではなく、声質から挙動から、全てがまるで別人であるかのよう。流石はハリウッドに連綿と連なるバリモア一家と感心させられること請け合いの演技である。
また、バリモア演ずる銀行家ポールには、幼くして別れた娘がいるのであるが、復讐を遂げ無実であることが明らかとなった後も、彼女の恋人に娘を頼むと言い残し娘に自らが父親であることを告げずに立ち去って行く。この脚本と演出の出来栄えも素晴らしく、本作を観終わった後には何とも言い難い暖かい気持ちにさせられる。ブラウニングは単なる奇抜な怪奇映画監督ではなく、堅実な演出手腕をも有していたことが良く分かる傑作である。
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