The Hunchback of Notre Dame (1939)
Director:ウィリアム・ディターレ
Cast:チャールズ・ロートン / モーリン・オハラ / セドリック・ハードウィック / トーマス・ミッチェル
Production Company:RKO
ヴィクトル・ユーゴーの同名小説2度目の映画化作品にして、初のトーキー版。ユニヴァーサルが1923年にロン・チャニー主演で制作したカジモドを演ずるのは、『ヘンリー八世の私生活』(1933)でアカデミー男優賞を受賞した名優・・・と言うよりも『獣人島』(1933)でモロー博士を演じたチャールズ・ロートンである。
いかにも怪奇映画的で醜悪なメイクを施したチャニーの23年版と比べると、ロートンのカジモドはやや現実的なメイク。ラストにポツリと呟く台詞もカジモドの存在の悲しさをよく表現しており、チャニーに勝るとも劣らぬ熱演を見せているが、何故か全体的に23年版程心に訴えかけてくるものがない。サイレント特有の体全体を使った大仰な演技がなく、台詞を中心とした感情表現に重きを置いた演出の結果であろうか。
その分、23年版よりも強く印象として残るのは、エスメラルダを演ずるモーリン・オハラの美しさである。後にジョン・フォード監督作品や、ジョン・ウェインの西部劇等で勝気な女性を数多く演じたオハラは当時まだ19歳。モノクロの映像も相まって、透き通るような美しさに吸い込まれてしまいそうになる。そりゃ厳格なフロロも恋に落ちて人の道を踏み外すわな、と妙に納得してしまう。
作品全体としては、物語の整合性やエスメラルダの美しさも手伝って本作の方が完成度が高いと言えるが、怪奇映画を愛好する者ならば、やはりロン・チャニーが台詞に頼ることなく全身を使ってカジモドの無邪気さ、純粋さを演じた23年版も比較してみて頂きたいと思う。ロン・チャニーが如何に表現力に優れているかを、逆説的ではあるがサイレント映画故に感じ取ることができるだろう。
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