Isle of the Dead (1945)
Director:マーク・ロブソン
Cast:ボリス・カーロフ / エレン・ドリュー / マーク・クレイマー / キャサリン・エメリー
Production Company:RKO
『吸血鬼ボボラカ』(1945)という邦題は、土着的な吸血鬼を扱った吸血鬼映画の亜種かと思いがちであるが、原題を直訳するならば「死の小島」となるわけで、吸血鬼映画ではない。勿論、吸血鬼や怪物は残念ながら出てこない。
第一次世界大戦前夜、バルカン戦争が繰り広げられている最中、厳格な軍人であるニコラス将軍は、妻の遺体を埋葬した小島に従軍記者のオリバーと共に立ち寄ることにする。しかし、島には敗血症が蔓延しており、島の住人達が次々と病に倒れていた。軍隊に病魔を持ち帰ることを危惧したニコラス将軍は、風向きが変わり敗血症の恐れがなくなるまで自らを含め住人達が島を出ることを禁止する。やがて、若きギリシャの娘シアこそが狼の魂を有した吸血鬼ボボラカなのだと、迷信を強く信じる老婆が将軍を説得し始める。
自身の目で見たものしか信じない、と頑なな態度を取る将軍が、閉鎖された極限状態の中で徐々に迷信に捕らわれていく過程が秀逸。始めのうちこそ老婆の迷信を一笑に付すものの、一人、また一人と死者が出ていく内に、吸血鬼ボボラカの存在を信じ出し、最終的には将軍も完全にその存在を認めてしまっているのが何とも恐ろしい。如何にもRKOヴァル・リュートンらしい、心理描写の積み重ねによる恐怖をテーマとした作品である。
しかし、ポオの「早すぎた埋葬」の要素を取り込んだ最後の展開は、RKOとしては珍しく明示的な恐怖表現となっており、むしろAIP的でやや蛇足であったように思われる。シアこそが吸血鬼ボボラカであると錯乱したニコラス将軍が、シアを殺害しようとするも、殺害直前に将軍も敗血症で倒れシアは助かる。という程度の演出の方が、RKO的であるようにも思うのであるが、そこは好みが別れるところとも言えようか。
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