The Abominable Snowman (1957)
Director:ヴァル・ゲスト
Cast:ピーター・カッシング / フォレスト・タッカー / モーリーン・コネル / リチャード・ワティス
Production Company:ハマー
『原子人間』(1955)同様、BBCの人気TVシリーズであったクォーターマス・シリーズの1エピソードの映画化作品。当時は、1951年のヒマラヤ探検隊の参加者であったエリック・シプトンが巨大な足跡の写真の撮影に成功し、雪男の存在が世界的に大きな注目を集めていた時代であった。
ヒマラヤのラマ僧達の寺院で薬草の研究を行う植物学者のジョンは、雪男の存在に関する論文をかつて著していた。そのジョンのもとに、一攫千金を目当てとした雪男の調査隊が協力を求め訪れる。調査隊が持参した雪男の牙と見られる証拠を目の当たりにしたジョンは、調査に同行することを了承し、一向はヒマラヤの奥深くへと入り込んでいくのであった。
予算削減のためのスタジオ撮影が多いハマー作品の中にあって、本作『恐怖の雪男』(1957)はピレネー山脈で行われたロケが非常に効果を挙げている。大自然の極限状態下で繰り広げられる人間ドラマを主軸に据えた物語が進む中、徐々にその存在が明らかとなっていく雪男の演出は手堅く、期待と緊張感を高まらせるに十分である。
・・・が、が!最後の最後で登場する雪男の造形の哀しさよ!嫌が上にも高まった期待を一身に背負って登場する雪男のその姿は、まるで雪山に住む毛深い老人か浮浪者か、といった風情なのである。高い知性を保有するという設定のためもあろうが、余りに御粗末なその風貌はそれまでの期待と緊張が高かっただけに、大きな失望へと急転してしまう。やはり、怪物映画の主役はあくまで怪物であって欲しいと思うのは私だけではあるまい。ハマーが怪奇映画専門会社のブランドとしての方向性を定めつつあったその初期に放った、怪作と呼ぶには多少の躊躇いを覚える作品である。
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