Tales of Terror (1962)
Director:ロジャー・コーマン
Cast:ヴィンセント・プライス / ピーター・ローレ / バジル・ラスボーン / デブラ・パジェット
Production Company:AIP
AIP/ロジャー・コーマンのポオ・シリーズ第4作目。それまでとは異なり3話からなるオムニバス形式で構成され、日本公開時は『怪異ミイラの恐怖』『黒猫の怨霊』『人妻を眠らす妖術』とそれぞれ単独で公開された。原作は順に「モレラ」「黒猫」「ヴァルデマー氏の症例」である。
『怪異ミイラの恐怖』では、愛する妻を出産で亡くし隠遁生活を送る父親の元へ、26年振りに一人娘が帰って来る。妻を失ったことで娘を憎んでいた父親であったが、親子の情が再び築かれていく中、死んだ妻の呪いが降りかかる。『黒猫の怨霊』では、酒に溺れる夫に愛想を尽かした妻が裕福な男性と不倫に走るが、夫に気付かれ間男共々地下の壁に塗りこめられてしまう。そして3話目『ヴァルデマー氏の症例』では、催眠治療を行なう医師が、人の死の瞬間に催眠術をかけることで精神の延命を試みようとする。
ポオ・シリーズの顔であるヴィンセント・プライスに加えて、『M』(1931)のピーター・ローレ、『フランケンシュタイン復活』(1939)のバジル・ラズボーンと豪華なキャスティングもさることながら、シリーズ初のオムニバス形式が何とも見ていて心地よい。それまでのシリーズとは趣向を異にしたテンポの良い構成は、そもそも短編の多いポオの小説にはオムニバス形式が合っていることを痛感させる。それだけに、以降のシリーズが再び無理矢理別々の原作を重ね合わせた、冗長な作風に戻ってしまったことは残念である。
3話ともいずれもよくできた内容の本作であるが、特に2話目の『黒猫の怨霊』の出来は素晴らしい。軽快なコメディタッチで描かるプライスとローレのワイン・テイスティング合戦に始まり、愉快な雰囲気から一転、殺害へと到る酔いどれを演ずるローレの表情の演技は必見である。本作のヒットにより、興行収入が停滞していたポオ・シリーズが再び勢いを取り戻すことになった快作。
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