The Ghost of Sierra de Cobre (1964)
Director:ジョセフ・ステファノ / ロバート・スティーヴンス
Cast:マーティン・ランドー / トム・シムコックス / ダイアン・ベイカー / ジュディス・アンダーソン
Production Company:ヴィラ・デ・ステファノ
『サイコ』(1960)の脚本家であるジョセフ・ステファノがABCの『アウター・リミッツ』シリーズに続いてCBSでホラーをテーマとしたテレビシリーズ『Haunted』を企画しパイロット版として製作したのが本作『シェラ・デ・コブレの幽霊』(1964)である。当初54分であった本作はその後撮影を追加され81分版となり、劇場公開が予定されたものの諸般の事情からお蔵入りとなり、長らく「史上最も怖い幻の恐怖映画」としてマニアの間で語り継がれることとなった。
盲目の資産家ヘンリーは、霊廟から夜毎にかかってくる電話に怯えていた。彼の亡くなった母親は「生きた埋葬」を怖れるあまり、自らの棺の横にヘンリーの部屋へと繋がる電話を設置しており、その電話から夜毎に女のすすり泣く電話がかかってくるというのである。ヘンリーの妻ヴィヴィアは心霊探偵のネルソンへ事件の調査を依頼するが、ヘンリーの家政婦であるポーリナはネルソンがかつて調査したシェラ・デ・コブレの事件を知っており、ネルソンを敵視する。果たして霊廟からかかってくる電話は霊による超自然現象なのか、はたまた何者かによる策略なのか。ネルソンの調査がはじまる。
本作のように観る機会が極めて稀であった作品は「幻の傑作」として、その機会に恵まれた者達によって自慢の意図も含め過剰に持ち上げられることが多い。既に輸入盤で容易に入手することができるにようになった現在では、果たしてそこまでの評価に値するものであるかどうかは疑問が残るものの、なかなか手堅く丁寧に作られていることは確かである。
特に、西洋としては珍しく怨恨にもとづく幽霊である点、足がない点、そしてこの時代の作品としては非常におどろおどろしい風貌をしておりしっかりと描写されている点は特筆すべきである。より残酷で恐ろしいホラー映画に慣れてしまった現代の我々からすれば、本作はそこまで怖くない、というのが妥当であろうが、この時代にこの幽霊のアップは衝撃的であったことは想像に難くない。CBSのテレビシリーズ『Haunted』の企画自体もお蔵入りとなってしまったのが大変惜しまれる作品である。
amazonでこの映画を検索