Dracula: Prince of Darkness (1966)
Director:テレンス・フィッシャー
Cast:クリストファー・リー / バーバラ・シェリー / アンドリュー・キーア / フランシス・マシューズ
Production Company:ハマー
ハマー・フィルムが制作したクリストファー・リーのドラキュラ映画第2作目にして、『吸血鬼ドラキュラ』(1958)の正統なる続編。前作のクライマックスシーンである、カッシング演ずるヴァン・ヘルシングとドラキュラとの対決から幕はあがり、再びリーのドラキュラが銀幕に復活する!リーのドラキュラ復活ということもあって興行収入的にはヒットを飛ばした作品である。
しかし、驚くなかれ。本作でリーは何と一言もセリフを発さないのである。これに関しては当事者のリーと、脚本家のジョン・エルダーとで、後日語った事実に食い違いが生じている。リーは「脚本のセリフがつまらなかったのでカットさせた」と言い、ジョン・エルダーは「リーは台本をもらうまで、セリフの無い事を知らなかった」と言っている。プライドの高いリーの性格を鑑みるに、個人的にはジョン・エルダーのインタビューの方が正しい気もしないではないが、とにかく残念ながら復活したドラキュラ伯爵は唸ったり、叫んだりはするものの、全く喋らないのである。
とは言え、やはりリーのドラキュラの存在感は圧倒的であるし、ゴシックムード溢れる映像は見るものにドラキュラの実在性を十分に納得させるだけのリアリティを持っている。『吸血鬼ドラキュラ』では描かれなかった、ドラキュラが犠牲者に自らの血を飲ませようとするマゾヒスティックな描写もあり、リーの勇姿を拝めるだけで満足できる怪奇の血が濃い人間ならば、必見の映画である。
ラストのドラキュラの終焉はおいおいというあっけなさがあるし、リーと対峙するアンドリュー・キーア演ずるシャンドール神父もカッシングほどの魅力を持ち得ていない。それでもなお、後期ハマーが制作したドラキュラ系の映画が徐々にセルフ・パロディのように形骸化していくのと比較すれば、この映画はまだ正統的な怪奇映画としての風格を保っていると言えるのではないだろうか。
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