ВИЙ (1967)
Director:アレクサンドル・プトゥシコ
Cast:レオニード・クラヴレフ / ナターリア・ヴァルレイ / アレクセイ・グラズィリン / コンスタンチン・エルショフ
Production Company:モスフィルム
ニコライ・ゴーゴリがウクライナで蒐集した民間伝承『妖女』を映像化したソビエト映画の傑作。同原作を映画化した作品としてはマリオ・バーヴァ監督の『血ぬられた墓標』(1960)があるが、事実上オリジナルの作品である『血ぬられた墓標』に比べ、本作『妖婆死棺の呪い』(1967)は原作に忠実な仕上がりを見せている。
クリスマス休暇で帰省した神学生のホマーは、その道中一晩の宿を借りた家で魔女と思しき老婆を退治した。後日、神学校へと戻ったホマーの元に、とある村の村長から瀕死の重症を負った娘のために祈りを捧げて欲しいと依頼が来る。嫌々祈祷に向かうホマーであったが、その村長の娘こそ、ホマーが退治した魔女だった。村長の願いも虚しく娘は亡くなり、村長はホマーに三日三晩娘のために祈祷をあげて欲しいと頼むのであったが。
さてこの映画、全体的に妙な「呑気さ」が漂っている。素朴で荒涼とした風景に始まり、村人や神学生達の振る舞い、ホマーが魔女と対峙する際の演出等に、独特の「呑気さ」があるのである。だがそれは作品の雰囲気を壊すものではなく、民間伝承であった本作の真髄をうまく体現していると私は思う。ラストに現れる寺山演劇を連想させる魑魅魍魎達も、ある意味稚拙なメイクが逆に土俗的で素朴な印象を与え、独特のおどろおどろしさを生み出している。そう、民間伝承とはまさにそういうものなのである。
その一方で、魔女がホマーに跨り空を飛ぶファンタスティックな映像や、魔女を演ずるナターリア・ヴァルレイの息を呑むほどの美しさ、礼拝堂で甦りホマーを脅す奇怪な仕草等、怪奇映画としての魅力も十分に兼ね備えている。邦題の突飛さに本作を敬遠している方がいるとしたら、それは間違いなく映画人生で大きな損となる傑作である。是非御一見を。
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