The Legend of the 7 Golden Vampires (1974)
Director:ロイ・ウォード・ベイカー
Cast:ピーター・カッシング / ジョン・フォーブズ・ロバートソン / デヴィッド・チャン / ジュリー・エーゲ
Production Company:ハマー
さて、遂にこの映画について語らねばならぬ時がやってきてしまった。我らがハマーがその末期に香港のショー・ブラザーズと手を組み放った怪作中の怪作『ドラゴン VS 7人の吸血鬼』(1974)である。ブルース・リーに代表されるカンフー・アクション、いわゆるドラゴン映画とハマーの御家芸ドラキュラ映画を組み合わせてしまった恐るべき作品である。
19世紀の中国。ヴァン・ヘルシング教授は中国に伝わる7人の黄金の吸血鬼について講義を行っていた。誰一人としてその存在を信じぬ中、まさにその7人の吸血鬼が故郷の村を襲っているシ・チン青年だけはヘルシングの言葉に聞き入っていた。彼はヘルシングの力を借り故郷の吸血鬼を退治しようとする。彼の頼みを受け入れた教授はシ・チンの兄弟達と共に吸血鬼退治へ彼の故郷へと向かうが、7人の吸血鬼を操っていたのは、かの宿敵、ドラキュラ伯爵であった。
正直なところ、本作にはもはや良質な正統派怪奇映画を生み出していた往年のハマーの姿はない。しかし意外や意外。この映画、思いのほかマニア受けがいい作品でもある。本作はハマー末期の作品ながらテンポが良く、また大胆にカンフー・アクションを取り入れたことで見せ場も多くテンションも高いのである。後年のキョンシー・ブームを考慮すれば、この路線があながち興行的に的外れであったとは言えないのではないだろうか。
とは言え、頑固な怪奇幻想愛好家を自負する私としてはやはり本作を許すことはできない。これがハマーではなくアミカスやタイバーンであったならば十分楽しめたのであろうが、本家ハマーがやってしまったことに私はとてつもなく大きな悲しみを覚えてしまうのである。悪いことに、ヴァン・ヘルシングを演ずるはピーター・カッシングその人。確かにカッシングの演技は作品に風格をもたらすが、ここまでストーリーが出鱈目となってしまった以上、私としては最早カッシングに出て欲しくはなかった。唯一の救いは、リーが前作『新ドラキュラ 悪魔の儀式』(1973)でドラキュラを降板してしまったため、ドラキュラを演ずるのが「本物」ではないということであろうか。まさに怪作と呼ぶに相応しい作品である。
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