Frankenstein (1910)
Director:J・シェール・ダウリー
Cast:チャールズ・オーグル / オーガスタス・フィリップス / メアリー・フューラー
Production Company:エジソン・カンパニー
世界で最初に撮影されたフランケンシュタイン映画であり、かの発明王トーマス・エジソンが設立した映画社が制作した怪奇映画史的にも歴史的にも記念すべき一本。本作は長らく消失したとされ幻の作品と言われていたが、80年代に入ってそのフィルムがコレクターの遺品から発見され、喜ぶべきべきことに現在では鮮明な映像で見ることができる。
固定されたカメラが映し出すその映像は、映画の原点であるファンタスマゴリアを強く想起させるものである一方、逆回しを使うといった映画特有の演出も見られ、創意工夫に満ち満ちている。フランケンシュタインの背後にカメラのフレーム外から迫る怪物を、部屋の端に置かれた鏡に映しこませるという演出も、観る者の視点をフレームの右端と左端に振ることでカメラが固定されていることを忘れさせる効果をあげており、なかなかどうして飽きさせない。
ユニヴァーサルの『フランケンシュタイン』(1931)を既に知ってしまっている我々にとっては、チャールズ・オーグル演ずる怪物がただのぼろ布を身に纏った乞食のように見え失笑を買うかもしれないが、それでもなお、映画好きならば一見の価値のある内容であると言える。
錬金術のように薬品を調合して生み出される怪物の誕生シーンに始まり、ファンタスマゴリアの真骨頂とも言うべき演出で迎える怪物の最期まで、映画産業が産声をあげたまさにその最初期の息吹を随所に感じ取ることができる記念碑的作品。
amazonでこの映画を検索