Body Snatchers (1993)
Director:アベル・フェラーラ
Cast:ガブリエル・アンウォー / メグ・ティリー / フォレスト・ウィッテカー / テリー・キニー
Production Company:ワーナー
「盗まれた街」の3度目の映画化にして、当時アイドル的人気を誇っていたガブリエル・アンウォーがヌードを披露したことで下世話な注目ばかりを浴びた作品。しかし、本作は78年版を超えるべく、侵略者の恐怖を思春期の娘と継母という家族の視点から再構築することで新たな切り口を生みだそうとした意欲作である。
思春期の少女マーティが、継母という存在が家族の中に侵入してきたことで抱く違和感や疎外感。多感な思春期の少女にとって、継母という存在は家庭という小宇宙に対する異星からの侵略者に等しい異質な存在として映っているのである。しかし、それはやがて文字通りの異世界からの侵略者へと姿を変え、違和感はやがて恐怖へと変わる。何とも優れた着想である。
しかし惜しむらくは、この素晴らしい観点が十分に描き切れたとは言い難いところである。着眼点を十分に生かしきれない演出と脚本、後半のB級アクションさながらの展開、そして下世話な要素。保育園で自分以外の子供が同じ奇妙な絵を描くことに怯える幼い弟のシーンや、薄幸な顔立ちのメグ・ティリーが無表情に語りかけるシーン等、部分部分ではぞっとさせるものがあるにも関わらず、全体を通してみるとひどくチープな印象は拭えない。
周囲の人間と異なる嗜好と美的感覚に対する違和感を思春期に強く抱いていた私にとって、本作のテーマは非常に共感できる要素であった。そしてそれは、怪奇小説作家ラヴクラフトが抱いたアウトサイダーとしての孤独と同質のものであり、さらに言えば、それこそが怪奇映画の真髄である「屈折したロマンティシズム」の根底を成す感情であると私は思う。それ故に、本作がもっと心理的描写に力を入れていれば、と非常に残念でならない。
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