Dellamorte Dellamore (1994)
Director:ミケーレ・ソアヴィ
Cast:ルパート・エヴェレット / フランソワ・ハジー・ラザロ / アンナ・ファルチ / バーバラ・クピスティ
Production Company:アウディフィルム
ダリオ・アルジェントの弟子であるミケーレ・ソアヴィの最高傑作。『デモンズ』(1985)とは全く無関係であるにもかかわらず、『デモンズ 3』(1989)、『デモンズ 4』(1991)、『デモンズ '95』(1994)とミケーレ・ソアヴィの監督作品を邦題で凌辱し続けた日本の配給会社関係者は全員、市中引き回しの上打首獄門ものである。
墓地の管理人フランチェスコは、ある問題を抱えていた。埋葬された死者達が7日後に甦り、夜毎に襲い掛かってくるのである。助手のナギと共に甦った死者を退治しては墓場の管理人を続けるフランチェスコ。そんな異常な日々が続くある日、彼は若くして未亡人となった美しい女性に一目惚れをする。彼女と墓地で結ばれたフランチェスコであったが。
本作はとにかく映像が素晴らしく美しい。頽廃的で幻想的な墓地や納骨堂に始まり、そこに登場する死神の異形の禍々しさ、草木が根を張り融合したリターナーと呼ばれるゾンビ達のマンドラゴラのような独特の外見。全てがファンタジックで美しい。特にゾンビと化したアンナ・ファルチ演ずるフランチェスコのファム・ファタールのシーンは異色の出来栄えである。
そんな幻想的な映像の中で繰り広げられる物語は、非常に不条理かつシュール。うんざりする日常業務をこなすかのように、淡々とゾンビを始末し続ける冒頭から本作は異質な世界観を提示しているが、フランチェスコがゾンビに噛まれてからはさらにそれが加速する。現実とも妄想ともつかぬ歪んだ世界の中で、フランチェスコは墓地の管理人という定められた役割にうんざりし、自らの存在意義を求めもがく。自己を映し出す鏡としての他者からの無関心と、死体を始末する非日常に縛り付けられる日常の苦痛。『デモンズ '95』は、カフカ的な実存主義的哲学性を感じさせる。
それだけに、本作の邦題と国内盤VHSがリリースされた際のジャケットデザインには、心底ガッカリさせられた。『デモンズ '95』は間違いなくミケーレ・ソアヴィの最高傑作であり、素晴らしく怪奇幻想的な作品である。是非御一見を。
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