Mary Reilly (1996)
Director:スティーブン・フリアーズ
Cast:ジュリア・ロバーツ / ジョン・マルコヴィッチ / ジョージ・コール / マイケル・ガンボン
Production Company:トライスター
スティーブンスンの『ジキル博士とハイド氏』を基に、ジキル博士のメイドの視点から物語を再構成したヴァレリー・マーティンの『メアリー・ライリー』の映画化作品。コッポラの『ドラキュラ』(1992)にはじまった90年代のゴシック・リバイバルの最後を飾った作品でもある。
本作はジュリア・ロバーツとジョン・マルコヴィッチという実力派俳優二人の共演ということもあり、人間ドラマに主軸を置いた非常に見応えのある作品となっている。しかし、その一方で怪奇映画を期待すると肩透かしを食らい、いつもの天真爛漫なジュリア・ロバーツを期待すると抑えた演技にガッカリするという、どっちつかずな出来栄えでもある。加えて公開当時は豪華なキャスティングで恋愛を主軸に怪奇映画を再構成することに世間が食傷気味であったこともあり、本作は興行成績が振るわずゴールデンラズベリー賞の最低主演女優賞と最低監督賞にノミネートされる結果となった。
本作の一番の失敗点はジョン・マルコビッチのアクの強さにあるように思われる。ジキル博士とハイド氏の外見上変化がさほどない本作では、ジキル博士の時からマルコビッチの暗い存在感が強烈に放たれており、ハイド氏になった際の驚きがないのである。いや、むしろ心の闇を抱えておりながら、それを理性で淡々と抑えているように思えるジキル博士の方が不気味ですらある。無論、それを狙っての上でのキャスティングや演出なのではあろうが、それが効果的であったかと言えば首を捻らざるを得ない。
それでも芸達者な二人が見せる演技合戦は安定感十分であるし、普段は明るいキャラクターを演ずることが多いジュリア・ロバーツの神経症的な演技も新鮮。劇場公開時の悪評ほどには悪くない作品であり、このまま埋もれさせるには勿体ない佳作である。
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