Let Me In (2010)
Director:マット・リーヴス
Cast:クロエ・グレース・モレッツ / コディ・スミット=マクフィー / リチャード・ジェンキンス / イライアス・コティーズ
Production Company:ハマー
新生ハマー・フィルムが満を持して再開した映画製作第一作目。スウェーデンの作家ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストによる『モールス』を原作とし、『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)のリメイク作品でもある。
いじめられっ子の孤独な少年オーウェンは、自宅アパートの隣に引っ越してきた不思議な少女アビーと知り合う。夜の中庭で会話を重ねる内に、孤独な少年少女同士お互いに惹かれあっていく二人であったが、アビーの引越と時を同じくして街では残酷な猟奇殺人事件が起こり始める。そう、アビーこそは200年に渡って生きながらえてきた吸血鬼なのであった。
アビーを演ずるクロエ・グレース・モレッツが抜群の存在感を放つ、イノセント・スリラーの傑作。はにかんだ表情と押さえ目の演技が、若干13歳の子役とは思えぬほどはっとさせる魅力を放っている。これほどまでに大人をはっとさせる美少女は『ロスト・チルドレン』(1995)のジュディット・ビッテ以来ではないだろうか。
そして、原作とはかなり方向性を異にしてはいるものの、作品の物語もまた素晴らしい。ぱっと上辺だけを眺めてしまうと、孤独な少年少女同士の幼く純粋な心の交流を描いており、ラストのオーウェンの選択にほっとしつつも切なくなる物語のように受け取れてしまうのであるが、本質は決してそうではない。アビーは外見は12歳の少女ではあるが、200歳の時を生きた吸血鬼なのであり、そこは全て計略に基づく行動なのである。
孤独な少年を狙い、その純粋な恋心につけ入り自らが生き延びるために利用する、そんな側面から作品を眺めると、何ともやるせなく、より切なく残酷である。オーウェンはやがて年老い、アビーの「保護者」としての役目を果たせなくなるだろう。それでもなお、彼はアビーに奉仕することをやめず、やがて彼は自ら証拠を隠滅し、アビーへその首を差し出すのではないか。そう、オーウェンは『ハンガー』(1983)のデヴィッド・ボウイよりも悲しく切ない存在である。観終わった後に、非常に後をひく吸血鬼映画の傑作であり、新生ハマーの第一作目がこれほどの素晴らしい内容であったことで私を歓喜させた作品。
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