The Thing (2011)
Director:マティス・ヴァン・ヘイニンゲン
Cast:メアリー・エリザベス・ウィンステッド / ジョエル・エドガートン / ウルリク・トムセン / エリック・クリスチャン・オルセン
Production Company:モーガン・クリーク・プロダクションズ
ジョン・W・キャンベル・Jr.の短編小説「影が行く」の3度目の映画化作品。厳密にはジョン・カーペンター版の『遊星からの物体X』(1982)の前日譚にあたる作品であり、物語やクリーチャーデザインもそれを踏襲し世界観を共有する作品である。
往々にしてリメイク作品や続編、前日譚といったこの手の映画作品は本家を超えることはなく、我々をガッカリさせるものが多い。しかし、本作は非常に丁寧に作り込まれた快作であり、前作の製作デビッド・フォスターを製作総指揮に迎えカーペンター版をリスペクトした上でよく研究したと思われる細かい整合性の一致は我々をニンマリさせる。その整合性は、前作冒頭でヘリで執拗に犬を追うことになるノルウェー観測隊のラストは当然のこととして、地球外生命体を氷ごと切り出す経緯、そしてその氷塊を運び込んだノルウェー観測隊基地の構造、人と融合した物体の焼死体の経緯にはじまり、手首と喉を掻き切り自殺した隊員の経緯や壁に刺さった斧など、極めて細部にまで至る。
一方、前作では血液を熱することで人間と物体を判別した検査方法は、本作では無機物への擬態ができないという特徴をついたものと捻りが加えられている点や、ノルウェー観測隊がアメリカ人とノルウェー人から構成されているため言語の壁がありより一層疑心暗鬼を助長させるという点など、新たな要素を感じる工夫が凝らされているのが素晴らしい。
本作『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(2011)を観ると、必ずや前作を観たくなり、そして『遊星からの物体X』を観ると、必ずや本作を観たくなるという、まさに前日譚としてあるべき姿の快作である。是非御一見を。
ところで、南極の観測隊は火炎放射器をどこも常備しているものなのだろうか。などと野暮なことを言ってはいけません。
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