サディ・サッズ
日本のインディーズ/ポジティブ・パンク史における唯一無二の存在、それこそがSadie Sadsである。そういう時代であった、と言ってしまえばそれまでであるが、メタル・パーカッションを大胆に取り入れたその無機質で硬質なインダストリアル・サウンドや、アート嗜好の強い異端的なパフォーマンスは強烈な個性を放ち、現代に至るまで彼らを超える存在を見出すことは今なおない。
Sadie Sadsは1982年にヴォーカルのSADを中心に結成。SADの創作言語による無国籍風唱法、スライドを用い舞踏的な要素を取り入れたステージ・パフォーマンスと、当時盛り上がりを見せていた日本のアンダーグラウンド・シーンの中でも、彼らの先鋭的な存在感は突出したものがあった。メタル・パーカッションの導入ということから、Einstürzende Neubautenとの類似性を指摘されることも多かった彼らであるが、Sadie Sadsはより狂的で異端的であった。
彼らはAuto-Mod主催のシリーズ・ギグ「時の葬列」にも参加し、今や伝説と化した「Bloody Valentine」での偶発的な事故による流血パフォーマンスを展開した後、ヴェクセルバルグから『Box With Little Doll』をリリースする。このアルバムの装丁の異様さと言ったらなく、複数のデザインから成る3000枚限定の箱入り仕様、2枚組のLPは面によって33回転と45回転が混在するという極めて異質な当時の自主制作盤では考えられぬ豪華さであった。無論その装丁だけに留まらず、収められている楽曲も呪術的で先鋭的なサウンドで聞く者を圧倒するものであり、彼らが如何に優れた才能を持っていたかを窺い知ることができる傑作であった。
しかし、彼らの音楽性は徐々にダンサンブルなものへと変化していき、そこにアングラ的な要素は見られなくなっていく。そして1987年にはバンド名をSadsに改め、ホーンセクションを取り入れたファンク・サウンドへと驚くべき変化を遂げ、やがてバンドは終焉を向かえる。しかし、彼らがSadie Sadsとして残した音源は今なお色褪せる事はなく、唯一無二の存在であり続けているということができるだろう。
Discography (Album)
Released 1985
01.Day Dream / 02.Japana / 03.Junk College / 04.W.S.D.G. / 05.L.H.O.O.Q. / 06.Glas Brugh / 07.Psi-Tech House U.N.O. / 08.Holding Eazy / 09.Ai Thought / 10.Box With Little Doll