ザ・メリー・ソウツ
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The Sisters of Mercyを率いるアンドリュー・エルドリッチが始動させた、ゴスの期待を一身に背負う期待の新プロジェクト。
そう紹介されてこのThe Merry Thoughtsの曲を聴かされたとしたら、この私もすっかり信じ込み、ありがたくひれ伏し、嬉々としてその音に聞き入るであろう。ところがところが、The Merry ThoughtsはThe Sisters of Mercyの影響を濃厚に、と言うよりも恥ずかしげもなく全面に打ち出したドイツのゴス・バンドなのである。そのオリジナリティを完全に放棄したかのようなバンド・スタイルは、淡々と感情を押し殺したような低くしゃがれたヴォーカル・スタイルにはじまり、シャウトを入れるタイミングとそのシャウトの言葉、ギターのかき鳴らし方、無機質なドラム、曲の構成やフレーズ、歌詞で頻繁に使われる単語等、もう全てが全てThe Sisters of Mercyそのものであるとすら言える。さらに写真を見て頂ければ分かる通り、外見までが驚くほどにそっくりなのである。ヴォーカルのマーヴィン・アークハムの頬のこけ方、皺の入り方は実はエルドリッチその人なのではないか?とすら思わせる程に似ている。
The Merry Thoughtsは、The Sisters of Mercyを強烈に真似ているだけあって、The Sisters of Mercyのファンならば必ずやツボなバンドであるものの、それゆえに生真面目なゴス・ファンからは総スカンをくらいかねぬ非常にあやうい存在のバンドである。これだけ真似ていながらもオリジナルの曲を作っているというのは、ある意味それも才能なのかもしれないが、果たして皆さんはこのバンドをどう評価するであろうか。私は彼らのオリジナリティという部分は全く評価はしないが、The Sisters of Mercyへの欲求を満たすためだけの存在として割り切ることを条件とするならば、すんなりと聞くことができオススメできるのではないかと思う。
本家The Sisters of Mercyの新譜が長らくリリースされない現在のこの状況下、長年ライブ・ブートレグばかりで我慢に我慢を重ね、来日コンサートも直前に中止された我々としては、The Sisters of Mercyの新曲を聞きたいという欲求をThe Merry Thoughtsで多少なりとも満たすというこの選択肢は非常に魅力的である。邪道であることを承知の上で手を伸ばしてみては如何であろうか。
Discography (Album)
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