ザ・シスターフッド
そもそもThe Sisterhoodというバンドは、The Sisters of Mercyが1985年に空中分解した後、ウェイン・ハッセイとグレッグ・アダムスがミッションの前身として始動したバンドであった。しかし、喧嘩別れした上にThe Missionサイドの楽曲にアンドリュー・エルドリッチのヴォーカルが乗ったデモ・テープがブートレグとして流出したため、彼らの仲は修復不可能な程にもめた状態となった。そしてエルドリッチはハッセイらのバンド名と同一のバンド名を名乗り、先に楽曲を発表することでバンド名を乗っ取るという暴挙に出る。かくしてゴスの双璧を成すThe Sisters of MercyとThe Missionは犬猿の仲となったのであった。
とにかく先に楽曲を発表することが目的であったエルドリッチのThe Sisterhoodは、シングルとアルバムをリリースはしたものの、やはり即席という印象を免れえない非常に変則的なユニットとなった。メンバーはヴォーカルにジェームス・レイ、コーラスに第二期シスターズにも参加した元Gun Clubのパトリシア・モリスンら、そして勿論ドラム・マシーンのドクター・アバランシェ。そう、意外と知られていない事実であるがThe Sisterhoodではエルドリッチはヴォーカルを務めていないのである。ところが、レイのスタイルがあまりにエルドリッチに似通っているため、実際のところ聞いても気付かないファンが多いようである。
音楽的な方向性としては第二期The Sisters of Mercyを予感させるキーボードを主体とした構成ではあるものの、傑作『Floodland』に見られるようなドラマティックな展開はそこには見られず、淡々とした冷たい音楽となっている。今となってはこのThe Sisters of MercyとThe Missionの騒動の一連の顛末を知る人も少なく、The Sisters of Mercyの歴史からも消え去ろうとしているThe Sisterhoodではあるが、The Sisters of Mercyの第一期から第二期の溝を埋めるミッシング・リンクとしての位置付けとして、ファンならば必聴であると言えよう。
Discography (Album)
Released 1986
01.Jihad / 02.Colours / 03.Giving Ground / 04.Finland Red, Egypt White / 05.Rain From Heaven