H・P・ラヴクラフト
著者:H・P・ラヴクラフト
訳者:宇野 利泰
出版社:東京創元社
発売日:1976.08.20
[収録作品]
クトゥルフの呼び声
エーリッヒ・ツァンの音楽
チャールズ・ウォードの奇怪な事件
全集第2巻にして真打ち登場である。ラヴクラフトが創造したコズミック・ホラー、クトゥルフ神話の中核をなす作品「クトゥルフの呼び声」の登場である。
クトゥルフ神話とは、我々人間がこの地球を支配する以前に宇宙からの大いなる支配者達が地球を支配していたとするもので、その暗黒の神々の神殿や、彼らの眠りを妨げることによって我々人間は精神と生命の大いなる危機に直面していく。このクトゥルフ神話は小説単品で描かれたものではなく、クトゥルフ神話体系に属する複数の小説によって徐々にその輪郭を現し補完しあっていく点が特徴であり、また、クトゥルフ神話の小説群はラヴクラフト・サークルと呼ばれるクラーク・アシュトン・スミスやロバート・ブロック、オーガスト・ダーレスらの小説家達をも巻き込んで展開されていった。
そんなクトゥルフ神話の聖典とされるのが、「クトゥルフの呼び声」である。数々の証言や新聞、手記から徐々に恐怖の実態が明かされていく過程が素晴らしい。緻密に計算された構成と、ラヴクラフトの病的なイマジネーションが見事に融合している傑作であり、間違いなくラヴクラフトの代表作と言える。
また、収録されている「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」は短編が多いラヴクラフトにしては珍しい後期の長編。映画化もされており、圧倒的な構成と文体で半ば強引に結末へと引っ張っていくのが如何にもラヴクラフトらしくて心地よい。傑作ぞろいで読みごたえのある全集第2巻。
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