Dagon (2001)
Director:スチュアート・ゴードン
Cast:エズラ・ゴッデン / フランシスコ・ラバル / ラクエル・メロノ / マカレナ・ゴメス
Production Company:カステラオ
『ZOMBIO/死霊のしたたり』(1985)、『フロム・ビヨンド』(1986)のブライアン・ユズナ製作、スチュアート・ゴードン監督のコンビが挑むラヴクラフトの最高傑作の一つ「インスマウスの影」。このコンビのおかげでラヴクラフトがおおいに異なる形で世に広まってしまった功罪は計り知れず、この二人にだけは「インスマウスの影」に手を出して欲しくなかったというのが本作製作の報を知った時の私の正直な感想であった。
恋人のバーバラ、友人夫妻と共にスペインの海洋にバカンスへ来ていたポール達一行は突然の嵐でボートが座礁してしまい、沿岸の漁村へ救助を求めることにする。しかし、そこの住人達は皆一様にぎょろりとした不気味な眼をしており、教会では異様な神が信奉されていた。バーバラや友人夫妻とはぐれてしまったポールは、やむを得ずホテルの一室で彼らを待つのであったが、それは恐怖の一夜のはじまりだった。
下品で悪趣味な演出でラヴクラフト原作を蹂躙してきたスチュアート・ゴードンであるが、本作に限って言うのであれば過去の作品よりも原作の持つ世界観に忠実である。降りしきる雨の中、理解のできぬ奇妙な声を発し片足を引きずりながらポールを追いかけてくる住人達はまさに原作通りの悪夢のさまであるし、漁村特有のむせ返るようなじめじめとした魚の匂いが映像全編を通じて観る者に伝わってくる。
原作には登場しないウシアという、村長の娘を演ずるマカレナ・ゴメスも非常に艶めかしく、雰囲気十分。同様に原作には登場しないヒロインであるバーバラはしっかりと惨殺されるし、ポールは原作通りに深淵へとかえっていく。多少のゴア演出は見られるものの、スチュアート・ゴードン監督作品のラヴクラフト物の中では、かなり完成度の高い作品と言えるのではないだろうか。
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