Dr.Jekyll and Mr.Hyde (1931)
Director:ルーベン・マムーリアン
Cast:フレデリック・マーチ / ミリアム・ホプキンス / ローズ・ホバート / ホームズ・ハーバート
Production Company:パラマウント
ロバート・L・スティーブンスンの「ジキル博士とハイド氏」は、ジキル博士のハイド氏への変貌という主題が視覚的な効果をあげるためか、映画創生期より幾度となく映画化されてきている。その数多いジキルとハイドものの中でも最も評価が高いのが本作品、1931年のフレデリック・マーチ主演版である。本作品は怪奇映画として初のアカデミー主演男優賞を受賞していることでも知られ、怪奇映画愛好家のみならず一般評価も高い作品である。
この『ジキル博士とハイド氏』(1931)の評価が高いのは、やはり正統派二枚目俳優であるフレデリック・マーチが非常に醜いハイド氏へと変貌するそのギャップにあるように思う。顔立ちの整ったジキル博士が、オーバーラップで徐々に猿人的で表情の弛んだ醜いハイド氏へと変化していくその過程は、ギャップが激しいが故に映像として非常に強烈な印象を与えることに成功している。しかも、変貌した後のハイド氏の野蛮さはその外見や粗暴な立ち振る舞いだけに留まらず、娼婦アイビーを精神的に追い込んでいく手口も非常に薄汚い。正にハイド氏こそ人間の悪の精神そのものと言えようか。
そのハイド氏の悪を際立たせるのが、ハイド氏に捕われる薄幸のアイビーを演ずるミリアム・ホプキンスの演技である。恐ろしさの余り逃げ出すことすらできず、ジキル博士に泣きつくシーンは哀愁漂う名演技である。マーチのアカデミー受賞の影には、それを引き立てているミリアム・ホプキンスの演技があることを忘れてはならないだろう。
ただ、私のように怪奇映画をややもすると怪物側の立場で見ている人間にとっては、ジキル博士が友人ラニヨンの告発により容赦なく秘密を暴かれる最期がかなり残酷な気がするのであるが、皆さんは一体どうお感じになるだろうか・・・。
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