Murders in the Rue Morgue (1932)
Director:ロバート・フローリー
Cast:ベラ・ルゴシ / シドニー・フォックス / レオン・エイムズ / ブランドン・ハースト
Production Company:ユニヴァーサル
世界で最初の推理探偵小説であるエドガー・アラン・ポオの「モルグ街の殺人」を原作に、ユニヴァーサルがベラ・ルゴシを主演に怪奇色を強めて制作した作品。この後ユニヴァーサルはポオ原作とは名ばかりの『黒猫』(1934)、『大鴉』(1935)と大幅な脚色を加えた一連のポオ・シリーズを展開していくこととなる。
19世紀のパリ。恋人同士のデュパンとカミーユはカーニバルでとある見世物小屋に入る。そこでは、ミラクル博士がエリックという名の類人猿を見世物にしており、エリックの言葉を翻訳しては、彼こそが人類の起源なのだと説いていた。しかしこのミラクル博士は、エリックの血液と人間の血液を融合させる研究に没頭する狂気の科学者だった。客席の中にいたカミーユの美しさに着目した博士は、彼女を研究対象として連れ去ることを目論もうとする。
思わず観終った後に小説を取り出して、自分の記憶が間違っていたのかと確かめたくなってしまう程に脚色された物語には、既にポオの面影はない。むしろ、本作は『カリガリ博士』(1920)と『キング・コング』(1933)の中間に位置付けた方が適切な作品ですらある。とは言え、類人猿エリックはアップでは本物の猿の映像を使用し、それ以外では着ぐるみによって撮影されているため、オブライエンのような特撮を期待してはならない。
また、そのミラクル博士という珍妙な名前に留まらず、髪型や眉毛の奇抜な外見のルゴシの役柄には、『獣人島』(1933)と並んでルゴシの役者としての早い没落を感じさせられる。デュパンがルゴシのイントネーションを奇妙に思う台詞までもあり、『魔人ドラキュラ』(1931)と同じ「白鳥の湖」で幕があがるオープニングに期待を高まらせてしまう怪奇映画ファンにとっては、このルゴシの扱いの低さは余りにあまりである。
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