The Invisible Man (1933)
Director:ジェームズ・ホエール
Cast:クロード・レインズ / グロリア・スチュアート / ウーナ・オコナー / ウィリアム・ハリガン
Production Company:ユニヴァーサル
『フランケンシュタイン』(1931)で一躍ユニヴァーサルの看板監督となったジェームズ・ホエールが監督したH・G・ウェルズの同名小説初の映画化作品。けたたましいヒステリックな笑い声と共に包帯を剥ぎ取るとその下には何もない、という映像のショッキングさは当時としては驚くほどのものであったことが容易に推察されるが、現代の我々からすれば悪趣味なジョークのような微笑ましい感覚を伴う作品でもある。
ジェームズ・ホエールの作風は、その独特のブラック・ユーモアが随所に見られることで知られているが、その感覚は本作において最も顕著であるように思う。これは『透明人間』(1933)というこの題材による所もあろうが、本作品には『フランケンシュタインの花嫁』(1935)でもキーキーと煩く騒いでいたバアさんが全編に渡って登場し、とにかくその作品の質を下げることに貢献している。これは好みの分かれる所であろうが、とにかく私はこのバアさんが気に入らない。私がホエールを評価しない所以はこのバアさんに集約されると言っても過言ではないほどである。
この煩いバアさんのキンキン声、随所に見られるホエール特有のブラック・ユーモア、そして透明人間のシュールな映像、これらの要素が本作品を怪奇映画なのか、コメディ映画なのか混乱させる。確かに恐怖と笑いは表裏一体なのではあるが、生真面目な怪奇映画マニアの私としてはやはりここまで笑いを表に出してしまうのは好ましくないと考える。『凸凹フランケンシュタインの巻』(1948)のように最初からコメディとして制作されているならばいざ知らず、極力笑いを誘う演出というものはして欲しくないものである。
透明人間という、映像としてシュールな趣のあるテーマであるからこそホエールはここまでの演出を行ったのであろうし、その方向性はある意味正解であるとは思うのであるが、透明人間を演じたクロード・レインズの熱演を見るにつけ、私はこの作品が残念に思えてならない。見る度に途中で幾度となく再生を止めたい衝動に駆られる難しい作品である。
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